FISPA便り「TPPと繊維ファッション産業」
TPP(環太平洋経済連携協定)への参加をめぐる論議では、自動車など大企業が積極的な賛意を表明する一方、農業や医療、漁業関係者の反対論が強く両論が対立しています。日本は、交渉のテーブルに着く以前の段階にありますが、繊維ファッション産業にとって、TPPはメリットが多いのか、それともデメリットが多いのでしょうか。
繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)が去る2月24日に東京で開催した経営トップセミナーは、100人収容の会場がほぼ満席になる盛況ぶりでした。テーマが「TPPとわが国の繊維ファッション産業」で、だれもが知りたいものだったからでしょう。講師は信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏。
真壁教授は、TPPについて「TPPは“環太平洋”における一大経済圏の創出が主眼であり、それはアジア・太平洋地域での関税など、貿易に関する制限を撤廃し、幅広い分野での経済連携を目指すFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)へのステップ」だと指摘し「日本は、国内の経済改革、自由貿易による企業体力の強化」を進めるためにも参加すべきだとの見解を表明しました。
その上で「TPPが与える繊維ファッション業界への影響」に触れました。骨子は①TPP加盟で海外製品が流入する。国内での低価格競争の継続が懸念される②国内外の企業統合、資本提携などが進展する可能性がある③織物、染色、縫製等の海外シフトによる受注減④染色など高い技術力を活かした海外進出の可能性がある⑤アパレル製品の海外進出を促進する⑥SPA業態でも海外進出が課題になる⑦小売り業態の課題は東南アジアの市場拡大でTPPはマイナスにならない⑧日本繊維ファッション産業が生きる道はブランド価値の確立に尽きる―などメリット、デメリットを挙げました。
結論的には「強いものにはメリットがあるが、弱いものには厳しくなる」というものでした。現段階では、これ以上、踏み込んだ話はできないと思いますが、要は「日本ブランドの確立やアジア需要の取り込み」など、すでに業界のコンセンサスになっている課題を着実に実行することこそが“正解”なのでしょう。
(聖生清重)