FISPA便り「国立新美術館でショー」

 オンワードホールディングス、ジルサンダー・ジャパンが先月末に東京で開いたファッションショーは、画期的な出来事としてファッション産業史に刻まれるのではないでしょうか。何が画期的かと言うと、ショー会場が、東京・六本木に建つ曲線が美しい国立新美術館だったことです。 

 当日の夜、国立新美術館の1階フロアの特設会場には、顧客、プレス関係者、セレブなど700人以上が集まり、“美の殿堂”で美しい「ジル・サンダー」のコレクション作品を堪能しました。ショーの後は、2階の廊下でレセプションが開かれ、「ジル・サンダー」のクリエイティブ・ディレクターのラフ・シモンズを囲む輪が参加者の注目を集めていました。 

 さて、画期的と言うことですが、国立の美術館で民間企業のファションショーが行われたのですから、まさしく画期的です。ファッション業界の関係者の間からは、かねて「フランスは、国もパリ市もファッションを産業としても文化としても重視しているから、公共的な文化施設をショー会場に開放している。それに比べて日本は…」との嘆き節が聞こえていました。ところが、今回の国立新美術館の英断で「日本もファションを文化として認識している」ことが証明されたことになります。 

 国立新美術館が、いかなる経緯でファッションショーの実施を許可したのかどうかは分かりませんが、ショー開催に「OK」を出した責任者には、拍手を送りたいと思います。ファッション産業を盛り上げようと大規模なショーを開催したオンワードグループの決断も評価できますが、その場所が国立新美術館だったことで、イベントの価値が一段と高まったと思います。 

 「ジル・サンダー」のショーが行われた先月25日、ニューヨークでは、日本総領事館大使公邸で和歌山県ニット業界の関係者がニューヨークのファッション関係者と交流したことを報道で知りました。在外公館を日本ファッションの発信に活用したい。ファッション業界の長年の希望が実現しました。

 「画期的なこと」が「当り前」になる日も近い―。

(聖生清重)