FISPA便り「PTJに見る合同展の効用」
日本最大のテキスタイル展示商談会として定着しているプレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ、主催・日本ファッション・ウィーク推進機構)が先ごろ、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれました。会場をゆっくり回りながら、気になるブースでテキスタイルの最新作に触れ、旧知の出展者や来場者に話を聞いて、印象に残ったことがあります。
個人的な感想ですが、ひとつは展示ブースでバイヤーに応対している社員が全体に若返ったこと。PTJをはじめ、ほとんどの展示会に出展している、あるテキスタイルメーカーは、すでに息子と娘さんが大きな戦力になっていますが、同社のように後継者に恵まれたメーカーだけでなく、多くのメーカーでも若手社員が頑張っていました。
同展は、商談重視の合同展として、日本の繊維ファッション業界のビジネスシーンでなくてはならないイベントになっています。立地の良さもありますが、新規顧客を獲得したい出展者と新鮮なテキスタイルを求めるアパレル企業や小売業などが出会う場として認知されていることが会場の雰囲気を活気あるものにしているように感じられました。その第一線に若手がいる。
出展ブースで若手が目立ったのは、同展に自腹で出展するテキスタイルメーカーには若者を引き付けるだけの魅力があるからではないか、と思いました。全国の繊維産地の多くのテキスタイルメーカーの数からすれば、少数派かも知れませんが、それでも好ましい傾向であることは間違いありません。
もうひとつは、年配の織物職人の話です。ブースの正面に吊るした超細番手の麻のスカーフを手に、展示会に続けて出展することで、「他社に負けないものをつくるぞ、と精進しました。それに、それまでは使用していなかった糸も展示会で知り合った人脈を生かして入手できるようになったことで製品の幅と販路が広がりました」と話してくれました。
新規販路の開拓は展示商談会の一義的な目的でしょうが、同時に合同展の効用として、自社の商品や見せ方のレベルアップ、自社が属する産地にはない機能を活用するために不可欠な人脈づくりなどがあげられていますが、実際、その通りのようです。
出展者からは「日本のアパレル企業のブランド製品の売れ行きが好転してくれることを願っています」との声もきかれましたが、それ以上に出展ブースでの若手の活躍ぶりが強く印象に残りました。
(聖生清重)