FISPA便り「人間中心のルミネ花崎経営」

直言の裏に確かな思想 

 「利益が企業の目的であってはならない。誰のために、何をするかが大事だ。それに未来をつくるための健全な赤字は必要だ」。「銀行は雨の日に傘を貸さず、取り上げてしまう。投資ファンドは、買収した企業に化粧を施して短期に売るだけ。これではホワイトナイトではない」。「企業買収は、買収会社の被買収会社に対する何らかの寄与、異ならない企業文化、買収会社の被買収会社そのものや商品に対するリスペクト(尊敬)の3条件がないと成功しない」。「親会社と子会社の関係では、親会社が株主権を乱用せず、子会社に有益なアドバイスを行えば本業以外の事業が確立できる」。 

専門店複合業態ルミネの花崎淑夫会長が、去る6月9日にIFI(財)ファッション産業人材育成機構)が今年度からスタートさせた「繊維ファッションビジネス研究会」の第1回の講演会で講師を務めました。これはルミネの経営から導いた「花崎経営」のほんのさわりです。 

花崎会長は、旧国鉄出身ですが、ファッションビジネスの現実、課題に詳しいことは広く知られています。講演では、「衣料品小売業は、量を売る世界は衰退産業だが、成熟国におけるこころに働きかける世界は無限大」との認識を示すとともに、だからこそ、アパレル、SPA企業にOEM・ODM乱用からの脱却、生産管理・生産企画の自社化、都市近郊アウトレットへの危惧について率直に話しました。同時に、自ら繊維産地に足を運んだ経験を踏まえて「日本の産地は絶滅危惧種。絶滅させないよう、特に百貨店には目覚めてもらいたい」などと課題を直言しました。

小気味の良い「花崎節」でしたが、筆者は、東日本大震災に触れて述べた「ファッション産業こそが明日への希望の先頭に立つべき」との“檄”と冒頭の会社論、ルミネの経営理念に関して話した「ショップスタッフを含む人が価値を生む」との確かな思想に裏付けられた直言に拍手を送りたいと思います。  

(聖生清重)