FISPA便り「未来からの留学生」
「子供は、未来からの留学生」だと言われます。まさしく、その通りでしょう。子供を見れば、その国の未来が分かると言っては、いささか断定が過ぎるかも知れませんが、人間社会―に限りませんが―では、近未来の大人である子供が人間社会の未来を明るいものにも暗いものにもすることは否定できないでしょう。人づくりが、古今東西、人類の最も重要な課題であることは間違いありません。
その人づくりで気がかりなデータがあります。各種専門学校で、ファッション系の学生が減少の一途をたどっていることです。
文部科学省のデータによると、1977年の専門学校生の総数は約26万9000人。それが2007年には62万7000人ですから、約2.3倍に増えています。
問題は、分野別生徒数です。この間、「服飾・家政(家政、和洋栽など)」は、8万8700人から2万1600人に激減しているのです。4分の1になってしまったのですから、ファッション系専門学校の経営が厳しさを増していることが推察できます。一方、「医療(看護、歯科衛生など)」は、4万5300人から20万3300人と約3.4倍、「工業(自動車整備、情報処理など)」は、4万5400人から9万700人と倍増しています。「文化・教養(デザイン・音楽など)」も、2万4400人から11万3800人へ4.7倍に激増しています。1977年と2007年の30年間における「専門学校の分野別生徒数」が様変わりしていることが一目瞭然です。
国家や企業の成長戦略では、必ずといってよいほどテーマに上がる「看護などの福祉関係」とクールジャパンに象徴されるデザインなどが若者の人気を集めていることが、専門学校の分野別生徒数の推移から読み取ることができます。
日本社会は、すでに人口減少時代に入っています。少子化で若者の減少も免れないと予測されています。そうした中で専門学校生の“ファッション離れ”が進行しているようです。
ファッション業界は、こぞって「未来からの留学生」が魅力を感じる産業に脱皮する努力が必要だと思います。
(聖生清重)