FISPA便り「SCM活動、第2ステージへ」
繊維ファッションSCM推進協議会(略称・FISPA、会長・馬場彰オンワードホールディングス名誉顧問)は、先週、第19回経営トップ合同会議を開き、繊維ファッション産業界の取引の適正化ルールである「取引ガイドライン」の改訂版である第三版を承認しましたが、今回の会議で浮上したことは企業のCSR(社会的責任)でした。特に、CSRの重要性を踏まえた取引ルールの順守が発注企業にも求められているとの問題意識はすべての企業が共有すべき重要なテーマになってきました。
経営トップ合同会議が発足して15年。「皆で取り決めたことは、責任を持って実行する」(馬場会長)ことが持ち味の同会議によって、基本契約書の締結が当たり前になり、長年の悪弊だった歩引きも廃止に向けた活動が浸透してくるなどの成果をあげています。
しかし、一方では、法令違反が少なくない外国人技能実習など、新たな問題も浮上しています。下請法の運用基準も見直されています。そうした環境変化を受けて改定された「取引ガイドライン第三版」は、課題だった縫製業と染色加工業が盛り込まれたことで、繊維ファッション産業におけるサプライチェーン全体の取引ルールがおおむね、出来上がったことになります。また、かねて廃止を目指している歩引きでは「一切、行ってはならない」と踏み込みました。
今後の課題は、ガイドライン第三版の普及と実行です。毎年、行っている取引適正化についての聴き取り調査を継続するとともに、縫製業の聴き取りも行うことになりました。こうした活動に関しては、発注企業の社会的責任が厳しく問われることになるでしょう。
公正取引委員会から今年に入って4回も談合との指導を受けたユニフォーム業界に関しては、FISPAの会員であるユニフォームアパレル30社が12月21日に全体会議を開き、公取の担当者を講師に「談合」についてのセミナーを開くことになりました。一歩、前進です。
もう1点、重要な決定事項があります。新設が決まった「取引適正化推進分科会(仮称)」活動です。CSRに対する社会的関心の高まりから「将来的には、取引適正化についての企業認証制度も視野に入れた検討が必要となってきている」としています。
経営トップ合同会議は、来年で20回。旧弊・悪弊を取り除き、時代変化に即した取引ルールを策定して、それを順守する活動は、「良き企業市民、良き、地球市民」になるための第2ステージに入ったと言えそうです。
(聖生清重)