FISPA便り「取引適正化で明るい未来を」
平成最後で新元号最初の年となる2019年は、取引適正化が業界ぐるみの課題になりそうです。繊維業界の各団体が加盟する日本繊維産業連盟(繊産連)の総会とパーティーが先週、都内のホテルで開かれました。主催者、来賓のあいさつは、奇しくも「取引適正化」を訴え、その実行を求めるものでした。
繊産連の鎌原正直会長は、主催者を代表してこうあいさつしました。「今年は、繊維産業の構造改革の年。取引適正化に向けた取引改革を実行する。外国人技能実習生の問題では繊維産業技能実習事業協議会が取り組んでいるが、これも適正に実施したい」と強調しました。
鎌原会長は、かねての持論である「世界の繊維産業の成長率は年率7.6%との予測もあり成長産業だ。機能性繊維、スマートテキスタイル、ファッションテキスタイルで未来を切り拓く」と述べたほか、「経産省が進めているコネクテッドインダストリーズの可能性を検討する」とも述べましたが、真っ先にふれた課題は「取引適正化」でした。
来賓あいさつは異例なものでした。経産省の滝波宏文政務官はあいさつの最後に「(経産)大臣からの指示」とわざわざ断った上で「取引適正化に向けて、自主行動計画の進捗、歩引き、長期手形などの改善に経営トップが具体的に取り組んでもらいたい。外国人技能実習生問題では昨年6月に繊維産業技能実習事業協議会が発足し、適正に実施することを決め、5000社に周知したが、さらに一段の周知を」と求めました。
経産省政務官が、具体的な課題を取り上げ、その実施を迫るあいさつは、異例と言うべきだと思います。世耕弘成・経産大臣は繊維産業技能実習事業協議会の第1回会合でビデオメッセージを送り、この問題解決に強い意欲を示していますが、その姿勢が繊産連の新春パーティーにも表れたことになります。
取引適正化は、歩引きや長期手形など不適切な取引を根絶することが目的ですが、同時に多様化、グローバル化しているSC(サプライチェーン)を持続的、かつ競争力のあるものに改革するためにこそ実施する必要があるのだと思います。現代の国際社会の課題である地球環境、人権にも配慮した持続可能な産業をその産業に参加するすべてのプレイヤーが作り上げる必要がある、ということでしょう。そして、それこそが鎌原会長が指摘する「明るい未来」を切り拓く基盤になると思います。
(聖生清重)