FISPA便り「まっとうな発言」

 年末年始の繊維ファッション業界紙、日経MJ紙を通読しての感想ですが、業界トップの発言では、繊研新聞の2018年12月25日付の「セール前提のMDを見直す」との見出しのTSIホールディングスの上田谷真一社長のものが秀逸で強く印象に残りました。

 上田谷社長は、シーズン終盤の廉売を見込んで製造原価を低く設定し、セールの大量販売で売り上げ予算の帳尻を合わせるビジネスを指し「正価で購入した客が損をするようなビジネスは破綻しているし、価格に対する不信感を招く」と語っています。

 この指摘は、ファッションビジネスに携わっている方なら、誰もがそう思っているのではないでしょうか。「無駄に作らない、無駄に運ばないというのが最大のCSR(企業の社会的責任)」とも語っています。環境や持続性、人権などに配慮した発言は、それはそれで評価できますが、そうした問題意識を包含した、実にまっとうな発言だと思います。

 もとより、上田谷社長も、そうしたビジネスへの移行が容易でないことは承知しており「できるブランドから切り替えていく」とそうですが、着実に進展することを期待したいと思います。

 一方、気になった記事は、日経MJが2018年12月24日に報じた「冬物セールも2回」です。アパレル大手、百貨店が連携して冬物セールを1月上旬と下旬の2回行うが、分割することで定価販売の期間を設ける、というものです。アパレルと百貨店は昨年夏に2回に分けたセールを実施し、集客に一定の効果が得られたとして冬にも同様な取り組みを実施することにしたそうです。

 現実のビジネス状況からすれば、セールはやむを得ないでしょうし、セールを待ち望む消費者もいるのも事実でしょう。普段は百貨店に足を運ばない若者が足を運ぶ効果も期待でき、そこから新たな展開が生まれるかも知れません。 

 季節性が高いファッション商品は、完売が難しいことは理解できます。その一方で、セールでもさばききれない商品が最終的には廃棄されていることも、また、現実でしょう。

 問題の本質は、そうした無駄を、いつ、誰が、どのように改善するか、でしょう。個々の企業が、自助努力で「セールに依存しない経営」に努める必要がありますし、アパレル、百貨店の連携では、ファッションの「ワクワク、ドキドキ」を伝えるイベントを工夫して打ってもらいたいと思います。

(聖生清重)