FISPA便り「繊研メルマガに見る業界の2018年」
年末になると、行く年を振り返り、新たな年を展望する機会が増え、新聞やテレビも「回顧と展望」の企画を競うのが習わしです。来年は「平成」が終わることもあって、例年以上に「過去」を振り返り、「未来」を見通したくなります。
そんな気持ちでいたところ、2018年のファッション業界を回顧する上で、格好の材料に出合いました。繊研新聞のメルマガ「繊研プラス」に掲載された記事でアクセス数の多かったトップ30とメルマガ読者が選ぶ2018年の業界版流行語大賞のファッションバズワードトップ5がそれです。
前者のアクセス数が多かった記事の第1位は「ザ・ノース・フェイス」ダウン人気過熱に警戒、でした。第2位は「ワークマンプラス」11月に2号、3号店開店、第3位は「横浜みなとみらいに新施設」の順です。年末のある日、横浜にある大型ショッピングセンターに足を運びました。クリスマス商戦とセールで大いに賑わっていましたが、「ザ・ノース・フェイス」の店舗は他店を圧する多くの人が入っていました。
2020年は東京オリンピックが開かれます。スポーツに関係するモノやコトへの関心が高まることは必定です。高齢化時代で、健康志向も一段と高まりそうです。そうした風潮が「ザ・ノース・フェイス」の好調さと、機能性が特徴の「ワークマンプラス」が1、2位にランクされた背景なのでしょう。
後者もなかなか、興味深いものでした。トップ3は、第1位「ゾゾスーツ」、第2位「キャッシュレス決済」、第3位「SDGs」(国連の開発目標)です。「ゾゾスーツ」は、究極のマスカスタマイゼーションの実現につながる革新的な仕組みであることは間違いないでしょう。事業展開は当初の計画より遅れているように見えますが、まさにデジタル革命と言われる時代を象徴するニュースだと思います。
こうしたランキングを眺めながら感じたことがあります。それは、一般的なアパレルブランドに関係するニュースが上位に入っていないことです。業界版流行語大賞で「繊研プラス」編集者が「ヒット商品やビッグトレンドが生まれにくくなっている。ビジネス用語やIT系トレンドが多い印象。ゾゾスーツは久しぶりのファッション関係」と記しているようにファッション業界関係の本丸ではない話題が上位を占めている現実をどう受け止めるべきでしょうか。
ある大手アパレル企業トップと年末に会食した際、そのトップは、最近の状況を「新ブランドが少ないって。採算をとるのが難しい」と吐露していました。それも現実なのでしょうが、来年は、本丸のアパレルブランドやヒット商品に上位を占めてもらいたいものです。
(聖生清重)