FISPA便り「価格設定と作り手の思い」
モノの購入やサービスを受けた際、現代人の大半は「Tポイント」カードなどや商業施設が発行する「○○カード」を提示するのではないでしょうか。かく言う繊維ファッションSCM推進協議会の事務局メンバーもランチで利用するレストランが発行している「カード」を利用して、何回かに一回は無料でランチを楽しんでいます。
このポイントですが、消費税が10%に増税されるにあたり、その緩和策としてキャッシュレス決済に限って付与される、つまり、増税が緩和される案が検討されています。政府も施策でポイントを導入しようというのですから、ポイントというものは完全に定着していると言えるでしょう。
しかし、ポイントは、ともかく、商業施設などが発行している「○○カード」は、よくよく考えてみると「割引」を恒常的に行っていることになりますよね。商業施設からすれば、何度も買い物をしてもらえる固定客に対するサービスで、それはそれで筋が通っていますが、「○○カード」を持っていない人との間には不平等が生じます。もっとも、「○○カード」は、すぐに発行してくれますから、不平等の指摘はあたりませんが。
一方、価格では最近「ダイナミックプライシング」なるものが増えつつあります。食料品、日用品などのタイムセール、ホテル代、航空料金など、商品やサービスの価格を需要と供給の状況によって変動させる価格戦略のことで、今後、急速に広がることが予想されています。AI(人工知能)を使用して販売状況によって価格を柔軟に変えることで食品の廃棄ロスの削減が進むかも知れません。
さて、そんな価格設定をめぐる昨今の動向ですが、ポイント制や会員カードは、あらためて「正価」とは何か、を考えさてくれます。消費者にとっては、「○○カード」もポイントも歓迎できるものですし、カードで買ったり、ポイントをもらえることが「正価」でしょうが、そうなると「本当の正価」はどこにあるのでしょう。
ちなみに、広辞苑で「正価」を引くと「「かけねのない値段」とあります。「かけね」とは「実際の値よりねだんを高くつけること」だそうです。それはともかく、ファッション製品の正価とは、生産者の汗と技術、ものづくりの思いも包含したものではないでしょうか。そうであってほしいと思います。
(聖生清重)