FISPA便り「ノーベル賞と4つの資質」

 年末の衆議院選挙で、大勝した自民党が政権に復帰した2012年。今年の日本を象徴する漢字一文字は、ご承知の通り「金」になりました。政治、経済、外交は、金銀銅は遠くメダルゼロの気分ですが、スポーツ、ノーベル賞は間違いなく「金」と言えるでしょう。

 ノーベル賞は、山中伸弥京都大学教授が医学賞を受賞しました。さわやかで謙虚な人柄もあって、誰からも祝福される嬉しい受賞でした。ロンドンオリンピックの金メダル同様、下り坂説が強まる日本にとって、しばし憂いを忘れさせてくれる朗報でした。しかも、難病治療に役立つことが期待できます。

 ところで、ノーベル賞級の発明・発見をする創造力にあふれた資質とは、一体どのようなものなのでしょう。ずいぶん前のことですが、繊維学会の夏季セミナーの特別講演で当時、群馬大学学長だった小野周さんは、ノーベル賞級の発明・発見をする独創力のある人の資質は、次の4つだとおっしゃいました。

 ①知能度が高い②他人と違うことをしても恐れない③執念深く、自分の意見を変えない④人を説得する能力。

 この話にはちょっとしたオチがあります。4つの資質は、心理学から見ると①はともかく②は分裂症③は偏執症④は躁鬱症なのだそうです。だからと言って、独創性のある人は精神面で問題がある、というわけではありませんので念のため。

 この話のポイントは、ノーベル賞級の発明・発見にとどまらず、新製品や新技術、新しいビジネスモデルの開発などの成果をあげるためには、少々異質なタイプの人を包容することができるかどうかが組織にとって極めて大事だ、というところにあると思います。クリエーションが死活的に大事なファッション企業にも当てはまるでしょう。

 それでは、良いお年を。                  

(聖生清重)