FISPA便り「“商工接近”は大潮流」

 先月と今月は、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれたテキスタイルの展示会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン2013秋冬」と「JFWジャパン・クリエーション」及びニット製品の展示会の「ジャパン・ベストニット・セレクション」(JBKS)に足を運び、主催者、出展者、来場した旧知の繊維ファッション業界人の多くの方に話をお聞きしました。

 3つの展示会で共通していたことは、会場が東京国際フォーラムという交通至便な場所で開かれたことです。テキスタイル展でばったり会った“テキスタイル好き”を自認する伊勢丹新宿本店長の中陽次さんの「交通が便利だし、会場の広さもほどほどで見やすい。賑わいもあるね」との感想に代表されるように好評でした。

 問題は、中身ですが、筆者は2つの課題を考えされられました。ひとつは、テキスタイル展では「せっかく良いテキスタイルを開発しても、(アパレル企業が)立派な服にしてくれなければ宝の持ち腐れになってしまう」との声です。アパレル企業にも、言い分や事情があるのでしょうが、ジャパン・オリジナルのテキスタイルを活用して消費者に支持される新しいファッションを次々と生み出してもらいたいと思いました。

 もうひとつは、ニット展も同様ですが、2003年以降、急速に高まった中小繊維製造業者、つまりテキスタイルメーカー、染色加工メーカー、ニッターなどの自立への挑戦です。脱下請け・賃加工を目指し、「自分で企画・生産し、販売する」との熱気が冷めてきている、との声を少なからず耳にしました。「自立」には販路開拓をはじめ高い壁がありますが、下請け・賃加工の本業の企画提案力を高めるためにも、身の丈に合った自立に向けて努力する必要があると思います。

 付言すれば、JBKS展の来場者の内容です。出展者にとって最大の得意先であるアパレル企業からの来場が減少し、小売業からの来場が増加したことが注目されます。小売業が差別化戦略の一環としてオリジナル商品の開発に舵を切っているという情勢の変化を背景にしたものでしょう。ニッターにとっては、安定的な事業展開のためには、必ずしも歓迎できる傾向ではなさそうですが…。そうであっても「商」と「工」の接近は、グローバル競争にさらされている繊維ファッション産業の大潮流ゆえの必然のように思われます。  

(聖生清重)