FISPA便り「厚底シューズで記録を狙え」

 毎年、新年度入りに際して、楽しみにしている調査があります。恒例の新入社員のタイプ調査がそれです。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大で、新聞もテレビもネット関連も「コロナ一色」。当然ですが、そんな状況下でも多くの会社には新入社員が仲間入りしました。

   入社式が中止されたか、規模をぐっと縮小して行われたか、おそらく異例の対応がとられたと思われます。新入社員にとっても、会社にとっても記憶に残る新年度入りになったことは間違いありません。なかには、コロナ禍で内定していたのに入社を断られた気の毒な人もいたそうですが、多くはコロナの不安が渦巻く中、それなりに胸を膨らませて新しい人生を踏み出したと思います。

   さて、新入社員のタイプです。人事労務分野の情報機関、産労総合研究所によりますと、2020年度の新入社員のタイプは「厚底シューズ」だそうです。箱根駅伝やマラソンで記録更新の影の主役とも言える厚底シューズ。最新のテクノロジーと豊富なノウハウから生まれた厚底シューズは、衝撃を吸収し身体に優しいそうです。テレビ観戦で多くのランナーが厚底シューズを履いているシーンを思い出します。

   今年の新入社員ですが、最短距離で卒業した人が生まれたのは1997年。北海道拓殖銀行、山一證券が経営破綻した年です。まさかと思った大手銀行、証券会社の破綻。もうそんなに経つのか、それともつい昨日のことのように感じるかは人によって異なるでしょうが、この世代、小学生の時はリーマン・ショック、中学生の時は東日本大震災、大学生の時は熊本地震、大型台風など自然災害が起こりました。

   経済的大事件や大きな災害に見舞われましたが、時代はIT産業が急成長し、グローバル化も定着しました。就職戦線は「売り手市場」でした。卒業式はコロナにたたられてしまい、新入社員にとっては出足をくじかれた格好ですが、これだけはやむを得ないと言わざるをえないでしょう。出足こそくじかれた新入社員ですが、コロナ禍もいずれ、終息に向かうでしょう。困難な時の入社だからこそ、すべての新入社員に「頑張れ」のエールをおくりたいと思います。   

  産労総合研究所の発表資料には「ITの進展とともに育った今年の新入社員は、先輩たちのノウハウを活かして就活を乗り切った。良い結果を生み出すには、走法を変更することなど(コミュニケーション・指導や働き方の変更など)準備や調整が必要」との助言がついていました。こんな時だからこそ、新入社員には厚底シューズにあやかって記録更新を期待したいと思います。

(聖生清重)