FISPA便り「コロナ禍の痛みと輸入浸透率」
本来なら東京オリンピック・パラリンピックに湧き上がるであろう2020年も、もう6月。今月で1年の半分が過ぎることになりますが、3月以降のコロナ禍で時の経過が速いのか、遅いのか、何ともとらえどころがない、落ち着かない日々が続いています。
休業要請が徐々に解除され、ようやく経済活動が再開されつつあります。しかし、漠然とした不安が拭い去れず、「コロナ以前」には戻れず、今後、企業倒産が続出しかねない心配があります。コロナと共存する「新しい日常」に慣れることが大事なことは言うまでもありませんが、需要がどこまで回復するのか、だれもが予測できないのではないでしょうか。
そんな中、毎年、注目しているデータが明らかになりました。日本繊維輸入組合がまとめている「日本のアパレル市場と輸入品概況」2020です。それによると、2019年のアパレル製品(外衣、下着)の輸入浸透率は、実に98・0%とまたまた上昇しました。2018年は97・8%でしたから、0・2ポイントの上昇ですが、驚くべき高さです。
輸入品と国内生産を合わせた国内総供給量は39億8433万点で40億点を下回りました。毎年、この数字をみて思うことは、総供給量は明らかに多すぎるということです。日本の人口は1億2600万人です。統計には下着を含んでいますが、そうであっても人口に比べて、供給量が過大であることは明らかでしょう。
国内生産はどうでしょう。2018年の国内生産は1億点を割り込んでしまいましたが、2019年はさらに減少し、前年比8・6%減の8742万点となっています。国内生産の減少傾向はとまっていません。輸入先別でみると、トップの中国は不変ですが、伸び率では中国が減少し、かわりにベトナム、バングラデシュ、ミャンマーなどが伸びています。そうした中で、ときおりSC(サプライチェーン)の見直しで国内回帰が話題になりますが、現実はそうではないようです。
コロナ禍であのレナウンが経営破綻に追い込まれました。コロナ以前から厳しい状況が続いていましたが、その背景のひとつにアパレル業界の大きな課題として供給過剰があげられていました。
コロナによって春物需要が激減し、多くの企業がその扱いに悩まされていると思われます。解決策の名案はあるのでしょうか。厳しい環境を生き抜く中で、個々の企業も業界全体としても、コロナ禍を契機に過剰供給にサヨナラをすることが大事ではないでしょうか。
ファッションには、人々の心を豊かにし、あるいは元気づける力があります。そのためにも過剰供給の解消に期待したいと思います。
(聖生清重)