FISPA便り「非接触型社会で高まるリアル」
コロナウイルスとの共存で生きる現代社会。新しい生活様式が、どうやら定着しているようです。「Go Toトラベル」の活況が好例でしょう。コロナウイルスが消滅するまで、感染防止に努めながら社会経済、文化活動を行う時間が続くことになりますが、この変化はポストコロナの社会でも人々の生活様式やビジネススタイルを新しいものに移行させることになりそうです。
コロナ感染が拡大した冬から春、そして夏を過ぎて秋が来た2020年。すべてと言える人々が自宅で過ごす時間が増えたことでしょう。多くの方が自宅勤務、つまりはリモートワークを取り入れているでしょう。自宅勤務が主で時々、出社という方もいらっしゃるでしょう。買い物は主としてネットで時々、リアル店舗に足を運ぶ。
例えば、講師が登壇して学ぶセミナー。大きな部屋で大勢の参加者を前に講師がマイクで講演するスタイルから、ネットで大勢の聴講者が自宅などでパソコンを通じて聴講するスタイルへ。筆者もファッション産業人材育成機構(IFI)のリモート講義を聴講してみましたが、なかなか快適でした。メモをとりながら聴講しましたが、「なるほど、便利なものだなあ」と実感しました。
IFIのHPを見ると、多くの講義がリモートで行われていることがわかります。報道機関の講演会やセミナーも多くがリモートに移行しています。ファッション産業界の花形でもあるファッションショーもネットで配信するリモート形式が中心になっています。ビジネスの現場でも新しいスタイルが定着しつつあるのではないでしょうか。
このコラムの場である繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)の活動でも、恒例の聞き取り調査では一部、リモート方式を取り入れたそうです。また、大勢が集まる会議もリモート方式を導入する方向で検討しているとのことです。ウィズコロナへの対応が確実に進んでいることをうかがわせます。
「クリックモルタル」という言葉があります。すでに20年以上前だったと思います。米国の流通事情に詳しい専門家から「最近の米国流通業界のキーワードはクリックモルタルです」と教わりました。ネット通販の広がりで小売業にとっては「リアル店舗」と「ネット販売」を同時に行わないと生き残れない、との解説でした。 その時は「そんなものかなあ」と半信半疑でしたが、結果は、今日の小売り状況を見れば明らかです。クリックモルタルは必須の戦略になっています。
ところで、リモート時代は言い換えれば「非接触型社会」でもあります。その時、人との接触を含めて「リアル」の価値が従来以上に高まることは間違いないのではないでしょうか。
(聖生清重)