FISPA便り「雨の日の水やり」

 雨の多い梅雨の日々。ちょっと驚いた話を耳にしました。ある小学校では、朝顔など植物の水やりを交代で実施しているとのことです。植物を育てるために水をやる。教育の面からも好ましい習慣だと思います。

 ところが、この話をしてくれた知人によると、雨の日にも水やりする子がいるとのことでした。一口に雨と言っても「お湿り」程度なのか、鉢が置いてある場所が軒下なのかどうか、など条件はさまざまですが、この場合の水やりは水やり不要な水量の雨の日の水やりです。

くだんの知人は「決められたことだから、単なる習慣として機械的に行っているだけで、植物と水の関係には気づいていないのではないか。これではマニュアル人間になってしまう」と憮然としていました。自然との触れ合いが減った、現代の子供たちの一面。この話は、例外的な話なのでしょうか。

「雨の日の水やり」で連想したことがあります。「雨の日には(必要な)傘を貸さないが、晴れた日には(不要な)貸す」。かつて巷間でささやかれた銀行の融資姿勢を揶揄した“通説”です。銀行には気の毒なこの通説は、いまでもそうなのでしょうか。

銀行融資の実態は知りませんが、それとは別に「雨」への対応では、各業界団体の役割でもこんなたとえ話ができるでしょう。「雨の日には、必要な傘(政府の支援策など)を借りるために活動する」。繊維・ファッション業界は、コロナ禍で市場規模が縮小し、厳しい状況が続いています。現下の状況では、政府に助成金の支給などの支援を求める役割が増しています。

 長引くコロナウイルス感染第3波での、商業施設の休業、時短問題をめぐっては、百貨店、ショッピングセンター、アパレル関連の事業者団体が政府、自治体に開店を要請しました。「雨の日に傘を借りる」という必要な役割を果たしたと思います。

 6月は、事業者団体の総会が集中します。定款で定められている前年度の決算、事業報告などを承認し、新年度の予算、事業計画、さらには新役員人事などを議決します。改めて、事業者団体の役割が根底から問われる時期でもあります。

 事業者団体の役割、存在意義を根本から見据えて、「雨の日」の対応を適切に行ってもらいたいと思います。同時に、社会に対してSDGs(国連の持続可能な開発目標)への対応や人権に対する配慮などを発信するとともに、そうした課題を踏まえた適正取引の推進、あるいはES(従業員満足)の向上などにも力を入れるべきでしょう。                   

(聖生清重)