FISPA便り「統計数字の見方で変わる実相」

 アンケート調査結果などの「数字」は、使い方というか、見方によっては、印象が随分違ってきます。例えば、賛否を聞いたアンケートの結果が、「賛成70%、反対30%」だったとします。賛成派からみれば「70%も賛成している」ということになりますが、一方の反対派からみれば「30%もの反対があった」ということもできます。

 同じ結果であっても、自分の立ち位置によって、受け止め方が大きく変わってしまう経験は、だれもが日常的に経験しているでしょう。世論調査などの結果のニュースを耳にしたり、新聞で読んだ時、調査のテーマにもよりけりですが、ある時は「70%も賛成なのか」、ある時は「30%も反対なのか」と感じるのは、自分の考えが賛否のどちらにあるかによって受け止め方が決まるからなのしょう。

 何故、こんなことを書こうと思ったのか。衣料品の輸入浸透率の数字で、数量ベースと金額ベースでは 市場の実相が「こんなにも違うんだ」といった経験を思い出したからです。言わば、統計の読み方なのですが、読み方によっては実相の見方が大きく異なることを知らされました。

 日本の衣料品市場をめぐる議論で、よく指摘される輸入浸透率も「数量ベース」と「金額ベース」では、大きな違いがあるということです。経産省の産業構造審議会繊維小委員会の資料をみていて、「(衣料品の輸入浸透率は、コロナ禍前の時点で)数量ベースだと約98%なのに、金額ベースだと約80%になっている、ということに改めて気づきました。

 98%という数量ベースの数字は、日本の衣料品市場が輸入品に埋め尽くされている印象を与えますが、一方、金額ベースでみると20%分は国産品が占めている、ということになります。「国産品のシェアは20%しかないのか」ともいえますが、数量ベースとの違いには、いささか驚かされるのではないでしょうか。

 輸入浸透率を、金額ベースでも見ることの必要性を気づかせてくれたのは、かつて、経産省が力を入れた中小繊維製造業者の自立支援事業の時だった思います。「金額ベース」で見れば、まだまだ国産品の市場はある、というわけです。低価格品が主力の輸入品に対し、国産品はベターゾーンからそれ以上の市場で受け入れられている。日本の衣料品市場の「実相」がそうだとすれば、「20%」の市場で大いに存在感を発揮してもらいたいものです。

 オミクロン株の感染拡大で多くの事業者(だけではありませんが)は、「またか」の思いを抱いていることと思いますが、グローバル時代であっても国産品を待ち望んでいる市場があることは、ポストコロナ時代の確かな希望ではないでしょうか。 

(聖生清重)