FISPA便り「SCの一丁目一番地」

 ショッピングセンター(SC)事情に詳しい友人が、先月、福岡市にオープンした「ららぽーと福岡」を視察してきました。8万6000㎡の新施設の大きな特徴は9カ所の広場。「買い物、スポーツ、教育、食を通じて交流し、来場者が感動を共有できる施設」がコンセプトで、ライフスタイルの中心地になる可能性が高いとの感想をもらしていました。

 そのSCですが、アパレル業界にとっては、気になる傾向が収まっていません。SCの専門家である友人によると、近年オープンしたSCの業種別テナント数は、2018年に18・9%だった衣料品が2021年には11・8%に減少し、同期間に食物販は11・8%から15・2%、飲食は18・9%から20・0%、サービスは22・3%から25・9%にそれぞれ高まっています。こうした傾向は百貨店でも同様でしょう。

 商業施設は全般的に、衣料品の「衣」中心から、食物販・飲食の「食」、インテリア・生活雑貨の「住」、さらには教育やミニ博物館などの文化、医療サービル、行政機関の窓口など、ライフスタイル全般へとウイングが広がっています。まさにライフタイル全般に関わる方向が鮮明になっているようです。友人は「ライフスタイルシティ」とか「ライフスタイルセンター」と呼んでいますが、その通りだと思います。

 今後、商業施設のライフスタイル型への移行が増えるとしても、「衣」がなくなるわけではありません。人々の生活の必需品で、かつ、気持ち良くしたり、ワクワクさせてくれる服。暑い季節、寒い季節にはおしゃれを楽しみながら人体を快適にさせてくれる服。冠婚葬祭や余暇、スポーツなどのさまざまな生活シーンに最適な服。

 そうしたファッションアパレルは、ライフスタイル型のSCでも主役であり続けるでしょう。むしろ、ライフスタイル型に移行すればするほど、ファッションアパレルのSC内での役割は高まるのではないでしょうか。「一丁目一番地」との言い方がふさわしいと思います。なぜなら、様々な生活シーンには、それにふさわしい服が求められるからです。

 コロナと共存しながら、社会経済活動を正常に回す動きが鮮明になっています。旅行や、移動、会食、さまざまなイベントも正常化に向かっています。止まっていたインバウンドも徐々に期待できそうです。

  コロナ禍を生き延びてきた繊維・ファッション企業の出番も増えることでしょう。                         

  (聖生清重)