FISPA便り「TX輸出の構造変化」
テキスタイル輸出に構造変化の波が押し寄せているようです。日本繊維輸出組合がまとめた2013年上半期(1-6月)の繊維輸出は、昨年来の円安にもかかわらず41億8400万ドルで前年同期比13.0%減少しました。昨年1年間の繊維輸出は、円高を克服して95億6000万ドルと100万ドルに“王手”をかけました。加えて、安倍政権発足以降の円安が追い風になり、今年の繊維輸出は待望の「100億ドル」実現が期待されています。
しかし、上半期の結果は10%を上回る減少です。何故なのか。内容を見ますと、主力市場の中国向けが16.0%減で、これが全体の足を引っ張っていることが明らかです。オイルマネーに潤う中近東向けは民族衣装用の需要が活発で11.0%増加していますが、分母が小さいため中国向けの減少を補うまでには至っていません。
中国向けは主力商品のポリエステル長繊維織物が、金額で28.0%、数量で19.0%減少しています。激減です。中国向けテキスタイル輸出は、暫八(加工再輸入減税制度)を利用して、テキスタイルを輸出し、中国で縫製したアパレル製品を日本へ持ち帰る「持ち帰り用」が半分以上を占めていると見られていますから、この貿易構造が変調をきたしていることをうかがわせます。
中国のポリエステル長繊維織物の品質が向上し、日本製にこだわらなくても済むようになったほか、円安でアパレル製品の輸入コストが上昇していることから商社、アパレル企業などが中国産の織物の使用比率を高めていることが指摘できます。日本産から現地産への置き換えが進行しているようです。
円安は、輸出には有利に働きますが、一方、製品輸入ではコストアップの要因です。特に、今年4月頃までは為替予約していたため、円安によるコストアップは軽微でしたが、5月以降は円安の直撃を受けています。こうした事情がからみあって、テキスタイル輸出の減少につながっていると見られます。
ある専門家は「つまるところ、日本のテキスタイル輸出で競争力があるのは高機能素材かエコ素材だけ」と指摘していますが、果たしてそうなのでしょうか。
(聖生清重)