FISPA便り「節ガスと渡り鳥の燃費」
一瞬、何の意味なのかと頭をひねりました。先日、新聞の見出しで「節ガス」の文字を目にした時です。見慣れない言葉なので、さて、はて、何のことか、と戸惑ったものです。そう時間をおかずに「ガスの節約」のことだとわかりましたが、瞬間的には「新型ガス」のことかとも誤解したのですから、ニュースに対する自らの感度不足を恥じた次第です。
「節電」に続く「節ガス」。猛暑の夏、寒い冬。経済活動の回復に伴う産業界でのエネルギー使用の増加などで、エネルギー消費は増加する一方です。地球温暖化対策の意味でも「省エネ」の必要性が高まり、その波が一般家庭にも押し寄せているというわけです。TVを見ると、例えばNHKは、放送スタジオからの放送で「節電のためスタジオの照明を通常より落としています」との字幕を入れています。
おそらく、今夏は「節電」、「節ガス」の呼びかけが全国津々浦々に行き渡り、多くの生活者が日々の生活シーンで「省エネ」に努めることになるのでしょう。「無駄」をはぶくための「省エネ」は、環境の世紀と言われる現代社会では必須の行動ですが、施政者にはエネルギーの安定供給を求めたいと思います。
そんなことを考えていた時、以前、読んだ本にあった鳥の驚くべき高水準の「エネルギー効率」のことを思い出しました。「カラスの早起き、スズメの寝坊」(柴田敏隆著、新潮選書)を本棚からひっぱりだして、該当箇所の「渡り鳥の燃料消費率」を読みました。
内容はこうです。「渡り鳥は、体重の27%の脂肪蓄積で950kmを無着陸で飛ぶことが可能だ。上手に使えば最高2500kmをノンストップで飛ぶ。一方、燃料を満タンにしたジャンボ機の全重量は352トン。成田空港から米西海岸まで1万1000kmをノンストップで飛ぶ。到着時の全重量は255トンだから、97トンの航空用燃料を消費したことになる。これは全重量の28%だ」
筆者の柴田氏は「航空機と渡り鳥の燃費のパーセンテージが似ているからといって、同列に比較するのは暴挙」と書いていますが、そうであっても「渡り鳥」の効率の良さには驚くばかりです。米国西海岸にいるメリケンキアシシギという渡り鳥は、何と、たった1グラムの脂肪で90kmも飛ぶのだそうですから。まさに驚異的です。
渡り鳥の燃費の良さに比べて現代人は、などという気持ちは全くありません。しかし、「節電、節ガス」の経済活動、生活を送るうえで、時には小さな渡り鳥の身体能力に思いを馳せてみるのも一考ではないでしょうか。筆者は、自動車のスズキのスローガン「小さなクルマ、大きな未来。」を想起してしまいました。
(聖生清重)