FISPA便り「五月病で考えたこと」

5月は、新緑が目に優しく、色とりどりの花々がそこかしこに咲きそろい、暑くなく、寒くなく、実に清々しい時期です。木々の葉を渡った風は、まさしく香りを含んだ「薫風」で、その風に身を置くと、心が洗われるような清新な気分になれます。

そんな5月ですが、待ち遠しいゴールデンウイーク(GW)になると、いつも思い出すことがあります。美しい季節なのに、鬱々として愉しめない五月病のことです。4月の新年度から、入学や就職でひとり暮らしを始めた若者が、新しい環境に適応できず、それが長い休みのGW中に発症する、うつ病のような症状が話題になったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。

幸い、最近はほとんど耳にすることがなくなりましたが、そんなことを考えていた時、新入社員にレッテルを張ることが通例になっていて、それによりますと、今年度の新入社員は「自動ブレーキ型」だとの説があることを知りました。

その意味は「困難な壁にぶつかる前に未然に回避する傾向がある」とのことです。なるほど、うまいことを言うもんだ、と思わないでもありませんが、しかし、そうしたレッテルを張った上司がいたとしたら、「お前さんが新入社員のころはどうだった?」。さらに「責任が重くなり、部下を引っ張る立場の今、『壁を未然に回避していませんか』」と言い返したくなりますよね。

しかも、上司が「昔は、壁にぶち当たっても、奮励努力して突破したもんだ」とのたまったとしたら「ウソでしょう。今のあなたを見ればわかる。それに、昔っていったい何時のこと」と言い返したくなること請け合いです。

何が、言いたいのか。五月病のリスクを回避するためには、上司は、レッテルを張らず、「昔はこうだった」、「おまえはいつもダメだ」とか、あいまいなことは言わず、個人個人の適性を見極めて、環境に適応できるように正しく導くことだと思います。

何せ、薫風薫る五月ですから、管理職も新人も、気分よくGW明けの仕事に精を出しましょう。

                                                                 (聖生 清重)