FISPA便り「マツオインターの意義ある挑戦」

アパレル企業のマツオインターナショナルが、新潟県見附市の織布業「匠の夢」の経営に乗り出し、「メード・イン・ジャパン」の匠の織物の持続的な生産に努めています。

匠の夢は、特殊な綿、綿・麻混織物などを整形から織りまで一貫で生産する織布業者で、主としてデザイナー企業やクリエーション色の強いブランドに先染め織物を販売してきました。しかし、3年前にオーナーが「黒字の間に引退したい」と表明したことから、パリの展示会でも人気の自社ブランド「慈雨」のオリジナル素材の調達先が無くなることを心配したマツオインターナショナルが経営を引き継ぐことにしました。

マツオインターナショナル傘下に入った匠の夢は、従来通り「匠の技から生まれる素材」の生産を継続していますが、最近は、「アパレル企業による織布業の経営」という利点を生かして、百貨店でイベントを開くなど、新たな生き残り策に挑戦しています。

昨年から今春にかけて西武そごうを中心に全国の百貨店で、新開発の草木染めのストールやブラウスを直接、消費者に訴求しました。草木染原料の草木や写真を飾ったり、卓上織機での織布体験などを行ったりしたところ、モノに加えてコトを求める売り場や消費者から好評だったそうです。

マツオインターナショナルは、国内素材を大事にするアパレル企業のひとつですが、織布業の経営は「メード・イン・ジャパン」を残すという日本の産地全体にとっても注目される試みです。

ストール、ブラウスなどの製品の生産、販売に乗り出す一方、匠の技のある同業他社に仕事を発注し、自社はテキスタイル企画料を受け取る試みもスタートしています。また、新潟のニッターとのコラボでジャカード織物とニットを組み合わせたスヌードも開発しています。さらには、素材を売りにしたアパレル製品のOEM(相手先ブランド生産)の構想もあります。

アパレル企業として、店頭起点のビジネスモデルへと変革しているマツオインターナショナルによる、アパレル機能を生かした機屋の経営は、日本のアパレル企業のあり方、産地の匠の技を持続させる方策として大いに注目されます。

                                                     (聖生清重)