FISPA便り「輸入浸透率と適地生産・適地販売」
2013年の衣類(布帛外衣・布帛下着・ニット外衣・ニット下着)の統計を眺めていて、改めて日本のアパレル産業の現実と課題を考えさせられました。輸入品が市場に構造的に組み込まれていて、万一、アパレル輸入がストップするとアパレル製品の供給ができなくなるという現実とグローバル時代の産業、企業行動で必要な「適地生産・適地販売」が行われていないという実態です。
日本繊維輸入組合がまとめた「衣類(アパレル)の生産と輸出入の推移」によりますと、2013年のアパレル輸入は前年比3.3%増の39億9947万点で、輸入浸透率は実に96.8%に達しています。輸入浸透率の高さは昨日今日のことではなく、驚くには値しないかもしれません。しかし、この数字が意味することの一つは「(そんなことは起こらないと思いますが)紛争など何らかの理由で輸入が途絶えたら、日本はアパレル製品の供給に支障をきたす」ということです。
アパレル製品は、人間が生存するために必須な「衣食住」の「衣」です。その生活になくてはならない「衣」の大半を海外、特に主要輸入先の中国に依存しているのです。アパレル製品の供給先が海外であるという事実は、考えてみるとちょっと怖い気がしますが、いかがでしょう。
ところで、この現実を招いたのは、日本の企業です。グローバル経済下、アパレル製品の生産は、中国からベトナム、ミャンマー、バングラデシュへと広がっています。まさしく世界での「適地生産」です。労働集約型産業の典型である縫製業が、少しでも安価な労働力を求めて生産地を移動することは必然ですし、ことは日本企業だけの行動ではありません。
ですが、「適地生産」と対になるべき「適地販売」は行われず、「適地生産・日本販売」ばかりになっていることは、アパレル貿易で輸入を100とした場合、輸出はたったの0.1でしかないことが明白に示しています。
95%を超える輸入浸透率は、日本企業の「適地生産・日本販売」がもたらした、と言っては過言でしょうか。
(聖生 清重)