FISPA便り「進化する丸井のウェブ戦略」
かねて、丸井のウェブ戦略にひそかな関心を抱いていたところ、折りよくファッション産業人材育成機構(IFI)の繊維ファッション研究会で「丸井のWeb戦略」と題したセミナーが開かれましたので聴講してきました。講師は、丸井取締役Web事業本部長の伊賀山真行さん。
以下は、同セミナーで知ったことですが、結論的には「丸井は、戦略的にウェブ戦略に取り組み、資金も人材もしっかり投じて、着実に実績を重ね、新たな次元に向かっている」ということでした。
丸井は1988年からカタログ通販を開始。その後、2005年にウェブ通販に進出。それまでは、丸井の店舗商圏外での展開でした。しかし、2008年からは店舗商圏で店舗、カード、ウェブの三位一体戦略を推進してきました。そして、現在は全国展開へと駒を進めています。
こうした段階を踏んできた丸井の通販事業規模は、一体どの程度なのでしょう。同社のウェブ通販事業は、自社サイトのほか、楽天、アマゾンのネット通販二強の三サイトで展開しており、現在の売り上げ規模は200億円超に上ります。店舗に比べると、食品売り上げを除いたファッション製品売上高では、新宿(エリア計)、有楽町に次いで第3位だそうです。店舗、カード、ウェブの三位一体戦略が功を奏していることが分かります。
伊賀山さんは、丸井のウェブ通販が丸井の店舗別売上高で第3位にまで成長した背景について「顧客のニーズの変化に対応してきた」ことを強調しましたが、筆者が印象に残った点は「店舗で下見、ウェブで購入」のショールーミングは少なく「ウェブで下見、店舗で購入」のケースが多いとの指摘と店舗とウェブを併用する顧客も多く、しかも併用する顧客は翌年の利用額が増える傾向にあるとの2点でした。
米国でウェブ通販が話題になり始めた頃、あるニューヨーク通から「近い将来、ファッション製品の小売りではモルタル(店舗)とクリック(端末機器)の両方が大事になる」と聞いたことがありますが、現実はそのように進んでいるようです。
(聖生清重)