FISPA便り「潮目の変化を実商売につなげよう」
日本製テキスタイルは、かねてその品質と感性の高さが世界のファッション市場で評価されています。その証拠に、長い伝統に裏打ちされた匠の技、科学の力、四季を通じて磨かれた繊細な感性から生まれた「ジャパン・オリジナル」のテキスタイルは、パリの有力メゾンでも採用されていることが知られています。
にもかかわらず、現実は産地の規模の縮小がとまらず、ほんの一部のメーカーを除いては売上高が増える方向にはないのが実情です。そんな中で去る5日、6日に東京国際フォーラムで開かれたテキスタイル商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)」展と繊維総合見本市JFWジャパン・クリエーション(JFW-JC)に足を運び、主催者、出展者、来場者の何人かと話してきました。
今回のテキスタイル展で特徴的だったことを、見聞したことで要約すると、テキスタイルメーカー、アパレル企業・小売り・デザイナーなどユーザーの双方が「メード・イン・ジャパン」のテキスタイルへの評価を再認識していることでした。高野口のパイル織物メーカーは、ブールの看板に「ジャパンブランド」を明記していました。西脇産地の(株)播も「日本製」を強くアピールしていたのが象徴しています。
パリのPV(プルミエール・ヴィジョン)、ミラノの「MU(ミラノ・ウニカ)」で日本のテキスタイルは、高く評価されています。そうした評価と上質なファッションを志向する流れが相まって、作り手と買い手の双方に日本製テキスタイルを見直す空気が強まっているようでした。円安に伴う海外生産のコストアップも背景にあるでしょう。テキスタイルメーカーが自信を回復し、ユーザーも日本製を再認識するようになった、つまり潮目が変わった、と言えば、言いすぎでしょうか。
願わくは、潮目が変わったからこそ、高い評価を実商売につなげてもらいたいものです。PV、MU展に詳しい専門家は、PTJの会場で「展示会の前後のフォローをしっかり行い、高評価を成約につなげる努力を惜しんではいけない」と話していました。その通りだと思います。
(聖生清重)