FISPA便り「経営トップ合同会議で私が選んだ注目発言」
繊維ファッションSCM推進協議会(馬場彰会長)の経営トップ合同会議が、去る12日に開かれました。繊維ファッション業界の有力企業67社の経営トップのほか、経産省幹部、繊維ファッション産業界の主要団体幹部、マスコミからの参加者がオブザーバーとしてずらっと並んだ会議風景は、なかなか壮観ですが、その内容も毎年、密度が濃いものです。今年もそうでした。
同会議の成果は、例えば、かつてはその認識すらなかった基本契約書の締結が、当たり前に行われるようになり、取引上の問題が生じても取引ガイドラインに基づいて解決される道が開けたこと、悪しき慣行である「歩引き」も全廃に向かって着実に進展していること、SCM構築に向けての受発注業務に関する「情報共有化」では、導入を想定している標準プラットホームに関して具体的に検討することになった点などにあります。
好例の質疑はどうだったでしょう。12人の委員が発言しましたが、“私流”で印象に残った発言は、大澤道雄オンワードホールディングス常務執行役員と池田安希子イトーヨーカ堂(IY)執行役員衣料事業部長のそれでした。
大澤さんは最後の発言者でしたが「SCM統一伝票の採用、基本契約書の締結もほぼ100%まで進みました。近い将来100%になります。決めればできることです」と断言しました。経営トップ合同会議の真骨頂は「経営トップが一堂に会し、取引ルールを策定し、策定したことは実行する」ところにあります。「決めればできる」は、その精神の実践ということになります。
池田さんの発言は、「IYは、すでにSPA化していて、半分は自社生産になっています。一方、『いつでも、どこでも、誰でも、何でも買える』オムニチャネル化に努めています。ネット通販、TVショッピング、CtoCも増えています。流通の構造変革への対応が必要です」というものでした。SCM構築では、変化する流通構造への対応が重要だとの指摘は、その通りでしょう。
会議の冒頭、小川誠経産省大臣官房審議官は「円安、エネルギー価格高騰、消費増税での価格転嫁、悪しき取引慣行の是正は政府も進める。SCM推進協議会の協力を期待したい」、講評で寺村英信経産省繊維課長は「SCMの活動は、繊維産業を強くするためにも必要だ」と述べました。その期待に応えるのが経営トップ合同会議の役割なのでしょう。
(聖生清重)