FISPA便り「純国産アパレルと日本の美」

日本ファッション産業協議会がオールジャパンの体制で純国産表示制度「J∞QUALITY商品認証事業」をスタートさせました。織り編み、染色整理加工、縫製の3工程を日本国内で行った「J∞QUALITY」ブランド商品は15年秋冬物から店頭に登場することになります。

新聞報道によると、この事業では「消費者の国産商品への認知を高めることで、国内の産地、縫製工場の連携を強化し、輸出促進にもつなげる」(三宅正彦・日本ファッション産業協議会会長)、「日本の伝統とクリエーティビティーを連動させ、Jクオリティーの価値を理解していただくためオールジャパンの考えで事業を支える」(廣内武・日本アパレル・ファッション産業協会理事長)、「繊維産業のサプライチェーン全体で盛り上げ、産業をグローバルな成長産業として再強化していく」(下村彬一・日本繊維産業連盟会長)ことが期待されています。

その通りでしょうが、期待と言えば、「日本の技術と美意識の証」である「J∞QUALITY」商品の認証にあたって「作り手の深いこだわりや情熱」、「精緻で丁寧な仕上がり」を求めているところにポイントがあると思います。

どういうことかと言うと、いったい、日本の技術と美意識とは何なのか、ということです。日本の美について筆者はかねて、故・多田富雄東大名誉教授の説を信奉しています。多田説は美しい日本のルーツは「自然の中に無数の神を持つアニミズム。俳句・茶道・能などに見る象徴力、滅びゆくものに対する共感・人の世の無常・弱者への慈悲などのもののあわれ、これらを技術的に包み込む匠の技」というものです。

いささか、言葉遊びかも知れません。しかし、経産省の支援も受けてせっかくスタートし、日本の繊維ファッション産業復権への熱い期待が寄せられている認証制度ですから「パリファッション」と言えば、だたちに「エレガンス」の言葉が浮かぶように、純国産の日本ファッションと言えば、即座に「日本の美」を連想させるような商品の創造を期待したいと思います。

(聖生清重)