FISPA便り「人材確保へ確かな一歩を」
去る1月に横浜で開催された全国SC(ショッピングセンター)大会の実行委員長である飯島薫さん(RBKリテールビジネス研究所代表取締役)は、かねてCS(顧客満足)に加えてES(従業員満足)の重要性を指摘しています。今回のSC大会でも、各種セミナーで「疲弊する現場」を直視して、さまざまな改善・改革を行う必要性を認識し、その解決に向けての方向性も論議されたと言っています。
ことはファッション製品に限らないでしょうが、小売りの現場からは販売員不足の声が高まっています。大型SCの出店に伴う販売員の獲得合戦も伝わってきます。東北の復興の現場や円安で国内回帰を鮮明にする電機・電子業界の動きも人手不足に拍車をかけそうです。
根底には、日本が人口減少時代に入ったという事情があります。ファッション業界では、早くから一般財団法人ファッション産業人材育成機構(IFI)を設立し、人材育成、優秀な人材のファッション産業への誘引に取り組んでいるように、しかるべき手は打ってきました。しかし、現実は、特に販売員の確保に悩む声を耳にする機会が増えています。
しかも、残念なことに若者の間でファッション業界の人気が高いとは言えません。一例をあげれば、文科省の統計によりますと、服飾系の専門学校生の学生数が1970年代後半には9万人弱を数えたのに、昨年は2万人を切っています。年々、人気が低下しているのが現実です。
そんな中で、年明けに「小さいけれど、確かな一歩」と言えるシーンがありました。先月中旬に開かれた日本アパレル・ファッション産業協会の賀詞交歓会で、機会あるごとに人材確保の重要性を提起してきた廣内武理事長は、今回も人材確保の重要性を百貨店首脳に呼びかけました。
これに対して、茶村俊一・日本百貨店協会会長は来賓あいさつの中で「人材問題は新たな宿題だと受け止めたい」と“返答”しました。運命共同体の関係にある百貨店とアパレル業界の認識が一致し、営業時間延長、セールの早期化・長期化・休日の少なさなど小売業全般の課題である「疲弊する現場」の改革の先駆けとなるような具体策を打ち出してもらいたいものです。
(聖生清重)