FISPA便り「経営トップ合同会議の成果と課題」
繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)の活動で中軸をなす「経営トップ合同会議」が、去る11月20日に開かれました。詳細な内容は、FISPAのHP で公表しています。このコラムでは、同会議を最初から取材していた繊維ファッション業界紙の記者OBとして一言、感想を記したいと思います。
同会議は、今回で16回目です。「業界の経営トップが一堂に会し、真のSCM(サプライチェーン・マネジメント)を確立するため、取引の不公平に起因するさまざまな課題を克服する取引ルールを定める。定めたルールは、参加各社が実践、実行する義務と責任を負う」(馬場彰FISPA会長)との理念を共有している、ユニークな会議の参加企業は、当初の24社から67社に増えました。
今回は、会員企業の経営トップのほか、各業界団体の幹部などのオブザーバー参加を含めて、総勢130人が一堂に会しました。馬場会長、経済産業書の糟谷敏秀製造産業局長のあいさつ、事務局からの活動報告の後、質疑が行われました。意見表明で目立ったのは過去15年の成果でした。
第一回の会議の頃は、発注なのかどうかが不明確な「『つぶやき、ささやき』が実態だった」(同会議座長の児島康信・三景取締役会長)が、その後の取り組みで基本契約書が当たり前になるまで改善し、「隔世の感がある」(岩田功・三陽商会取締役兼常務執行役員)の発言に代表されるように多大な成果をあげました。不公正取引のひとつである「歩引き」も、まだ、一部会員外に残っているものの、廃止が大きく進展しました。
ただ、手放しでは喜べません。グローバルな取引に対応できる標準的な「情報プラットホーム」の形成に関しては、総論は賛成だが各論になると、各社がそれぞれ独自のシステムを運用していることから、コストアップになりかねないなどとの意見があり、進展しているとは言えません。
そんな中で丸井グループの佐藤元彦・取締役専務執行役員は「標準化はグローバル時代では当たり前。例えば、アマゾンを利用しようとする企業は、彼等が求める標準のJANコードを取得せざるを得ず、結果として、今まで進まなかったJANコードの普及が進んでいる。今は、全世界で標準化が求められる。総論賛成なら、トップが『やる』と決断すべきだ。そうすれば、5年後、10年後に業界は確実によくなる」と述べました。この佐藤専務の“檄”が今後の議論にどう反映されるか、注目したいと思いました。
(聖生清重)