FISPA便り「JAFIC懇親会で見た夢」

 今年の日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)の総会後の懇親パーティーは、新趣向で行われましたが、新趣向は二つの大事な可能性を示唆していることを感じさせてくれました。ひとつは、JAFICが目指す「需要創造」と「市場拡大」の具体的な方向を打ち出したこと、もうひとつは、地方創生への期待です。

 懇親パーティーの会場は、従来のホテルから渋谷ヒカリエに移し、イベントを盛り込みました。JAFICが取り組んでいる若手クリエーターとアパレル企業のマッチング事業に登録している100人の若手クリエーターから30人を選び、その作品をファッションショーで見せたほか、尾州、播州、石川、新潟の各産地の素材・製品を展示し、さらには一般大学生ファッションサークルによる展示もありました。

 JAFICの廣内武理事長はあいさつで、かねてのJAFICの方針である「需要創造と市場拡大」に触れ、前者は若手クリエーターの活用で、後者は純国産製品認証制度の「J∞QUALITY」を活用することで「消費を浮上させ、勇気と生きがいを与えることができるファッション産業をつくる」と述べました。

 足元の景況は、中間ゾーンを得意とするJAFIC会員のアパレル企業にとって厳しいものがありますが、そうした状況を打破するためにも、若手のクリエーションと産地の高度かつ繊細なテキスタイルやニットとのコラボの重要性を新趣向が示した形になりました。

 もうひとつは、懇親パーティーに愛知県一宮市と兵庫県西脇市の市長が参加したことです。他の多くの繊維産地も同様ですが、繊維産地を形成している自治体にとって、繊維産業の活性化は地域の活性化そのものです。かつて繊維産地を中心にしてファッションをキーワードにした「ファッションタウン構想」がありましたが、この構想はいまでも生きていると思います。

 地域の活性化では、「よそ者・バカ者・若者」の「3者」が原動力になると言われます。地域の良さを発見する「よそ者」。一心不乱に活性化に取り組む「バカ者」。それを盛り上げる「若者」というわけです。

 アパレル企業と若手クリエーター、産地企業との間で、この「良き三角関係」が成り立たないものか、と思いました。ことは容易ではないでしょうが、そんな夢を描いた一夜でした。

                  (聖生清重)