FISPA便り「ちょっといい話」

 英国のEU離脱、米国の大統領選のドタバタ劇に見られるように、「分断」、「格差」が多くの国々を覆っている、と言えそうな世界状況ですが、日本社会は「格差」が拡大しているとされるものの、そうであっても「健全」なのではないか。言い方を変えれば「捨てたものじゃない。いや、世界に誇れるのではないか」と思わされる調査があります。

 前回、このコラムで紹介した野村総合研究所(NRI)が3年に一度実施している「2015年NRI生活者1万人アンケート調査結果」で浮かびあがった、“健全な”日本人の生活態度のことです。同調査は「最近の日本における消費スタイルの変化」を具体的なデータで示していますが、その中の現代消費者像を探る調査結果は、日本人の生活態度の健全さを示しているように感じました。

 同調査で「理想の暮らし」を聞いたところこんな結果が出ました。日本人の多くが「ほどよい利便性のある郊外で快適な暮らしをする」、「仕事をしつつも、趣味に没頭する」、「地球環境に優しい生活をする」ことが理想だと回答しているのです。この結果に同感できる方は多いのではないでしょうか。この質問は、今回の調査が初めてとのことですが、次回の調査結果が楽しみです。

 さらに「もったいない:エコ意識」では、「お金を『多く』使うよりも『善く』使いたい」、「高齢者を中心にエシカル消費が台頭」との結果となりました。「環境保護や社会貢献に役立つ商品を選ぶようにしたい」との回答割合は、60歳代で66.7%、70歳代では68.0%にのぼっています。最も割合の少ない20歳代でも44.3%です。

 もうひとつ、意外と言っては失礼ですが、感心されられた結果があります。「つながりたい:社会貢献意識」の調査で「積極的に社会のために貢献したい」との回答割合は、各年代で70%を越えていますが、とりわけ10歳代は2006年の73.0%から2015年には83.0%に高まっているのです。

 東日本大震災の影響や地域でボランティア活動をするなど学校教育で社会貢献活動を重視している背景がある、とNRIの日戸浩之氏は見ていますが、よき未来社会が到来する可能性を示している結果は「ちょっといい話」ではないでしょうか。                        

(聖生清重)