FISPA便り「ファッションはメインではない?」

 最近、気になる説があります。「ファッション(アパレル)は、もはやサブカルだ」と言うものです。ファッション専門紙の電子版だったと思いますが、記者がそうした原稿を書いたところ、多くの賛同の声が寄せられた、との記事を読んだことがありますが、その矢先、先週、東京・代々木で開かれたファッションの合同展示会、ルームス展で出会った旧知の中堅ファッションジャーナリストも「そうですよ。ファッションはサブカルになってしまった」と話していて、いささかショックでした。

 ファッションは、人々の関心を集める対象として常に「メイン」だと思い込んでいる者にとって、そうではなくなった、との説には承服できないものがあります。サブカルの定義は複雑ですが、この場合は「メイン」に対する「サブ」としておきます。「もはや、サブカルだ」とは、言い換えれば「もはや、メインではない」との意味です。が、果たしてそうなのでしょうか。

 確かに、ルームス展の会場を見る限りでは、ファッションの存在感は低く、目立った出展品は日本の伝統工芸技術を駆使したものを含む雑貨、アクセサリーでした。あるいは、高級なアウトドアライフを楽しむ道具やエシカル商品でした。

 日本の技を駆使した雑貨類。それはそれで好ましいことだと思います。繊細で高品質な日本の美を備えた商品には、世界の消費者の心をつかむ役割が期待されます。明治時代初期には、日本人の超絶技法から生まれた工芸品が主要な輸出品だったことを想起すれば、ルームス展で「地場産」ゾーンが目立ったのは「伝統回帰」と言えるかも知れません。 

 さて、ファッションは「サブカル」なのか、です。愚考すれば、ファッションは、合同展示会にはなじまなくなったのではないでしょうか。供給側の小売業やアパレル企業がSPA(製造小売業)化して、特に、ファッション商品の小売り現場では、eコマースを含めて、セレクトショップに代表される小売業がSPA化しています。低価格が売りのチェーンも多くはSPAです。卸売り業者から仕入れる形態の小売業がシェアを落とした結果、広範囲の売り手と買い手が出会う場としての合同展の必要性が薄れた、と言えるのではないでしょうか。

 とは言え、ファッション関係者には、いつの世でも「ファッションはメイン」だとの気概を忘れずに、クリエーションに磨きをかけてもらいたいものです。装うこと。それは、人類誕生以来、連綿として続いています。ファッションは、人とともにあり、人の気持ちを幸せにするチカラがあるからです。             

(聖生清重)