FISPA便り「未来を託すに値する仕事」
先月末に東京・有楽町の東京国際フォーラムで開かれたテキスタイル展示商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン(PTJ)18年秋冬」は、会期の2日間とも大いににぎわいました。2日目の昼頃に出かけたところ、会場は大勢の来場者で埋まり、一目で活気があることがわかりました。
同展は、高品質で完成度が高いテキスタイル展として、バイヤー、出展者から認知され、開催経費面でも自立しています。会場には一見して海外からと見られる来場者の姿もあり、優れた日本素材への関心の高さが広がっていることを感じました。
そんなPTJ展に出展していた旧知のテキスタイルメーカーの代表の話が「日本のテキスタイルメーカーの生き方」の好例ではないか、と強く印象に残りました。W社のWさんです。Wさんは、PTJ展にはこれまですべての回に出展しています。皆勤賞なのです。また、PTJ展以外の合同展でも常連の出展者として知られています。
Wさんに出会ったのは、ずいぶん前のことです。東京の展示会で自社のテキスタイルをアピールし、新規販路を開拓したいと、実に熱心に活動していました。その結果、自社の商品開発力が高まり、商品ラインの幅が広がり、販売先は問屋から百貨店や通販などに広がりました。最近は、誰でも知っているパリのラグジュアリーブランドからの受注も入っているそうです。
産地の中小繊維製造業者が生き残るためには、下請け・賃加工だけでなく、自分で企画・生産・販売する自立が不可欠だとされていますが、Wさんは愚直にその道を歩んできたと言えます。そうした歩みの中で、展示会で知り合った全国のテキスタイルメーカーなどとの交流も大いに役立っているとのことでした。
そんな話をお聞きしたのですが、何よりうれしかったのはWさんの息子さんと娘さんが海外でファッションを学んだ後入社して、すでに大事な新戦力になっている事実でした。確かに、ブースの奥で接客していた若者は、Wさんにそっくりでした。そう。ご子息だったのです。
息子や娘が親の会社に入社して家業の後を継ぐ。そうした会社が全国にどれだけあるのかはわかりませんが、少なくとも「若者が未来を託すに値する仕事」としてテキスタイルビジネスを選んだのですから、親ならずとも大歓迎したい出来事です。
(聖生清重)