FISPA便り「IFIの講座受講にみる経営者の判断」

   繊維ファッション業界の人材育成に取り組んでいる一般財団法人ファッション産業人材育成機構(IFI)の講座の受講状況をお聞きする機会がありました。毎年、受講生が多いプロフェッショナル・コースで始めた「デジタルビジネス講座」と昨年に続いて開いている「ロジスティクス研究会」は、いずれも定員をオーバーする人気だそうです。

   繊維ファッション産業は、今、デジタル革命の真っただ中にあります。そこで「WEBと店舗を行き来する顧客を理解し、最新事例を学び、ファッションを起点にした“デジタル”をどう伸ばしていくか、どう活用していくかを、受講生同士、切磋琢磨しながら考えよう」(講座監修の奥谷孝司・オイシックスドット大地㈱執行役員統合マーケティング部長)との問題意識から開始した「デジタルビジネス講座」は25人の定員を軽くオーバーして好評です。

   ファッション関連企業に特化したカリキュラムや座学だけでなくグループワークで理解を深めたり、受講生同士でネットワークが構築できることが人気の理由ですが、ファッション関連企業がデジタル革命に強い関心を抱いていることが背景にあることは間違いありません。
物流経費の高騰に対しても対応が迫られています。昨年度に開始した「ロジスティクス研究会」は、今年度4月から8月までの全6回の講座を「クリエイティブ・ロジスティクスへの挑戦」をテーマに開講していますが、これも定員を超える人気とのことです。

   受講生からアンケートをとり、講義内容をニーズに合ったものに変え、一段と充実したことで、納期遅れ、経費高騰に対して有効な対策を探り、さらには共同配送の具体化が視野に入ることが期待されます。

   一方、これまで看板コースだった全日制のマスターコースを改変して、働きながら学べるようにしたアドバンスコースは、百貨店、セレクトショップ、アパレル企業など8社・11人の受講生でスタートしました。これまでは、若手中心でしたが、新コースは、全員が30-40歳代の幹部候補生だそうです。

   「企業は人なり」は、誰もが指摘する真理ですが、その一方では、経費削減の際は真っ先に削られることもまた現実です。しかし、時代は、デジタル革命、物流費高騰、幹部養成への対応は待ったなし、の状況です。そうした中で、多くの経営者が必要な人材投資は惜しまない、と判断していることがIFIの最近の講座の受講状況から読み取れそうです。             

(聖生清重)