FISPA便り「森(産業)がなければ木(企業)は育たない」
例年5月、6月は、事業者団体など各種団体が年に一度の総会を開催する時期です。繊維ファッション業界でも、多くの団体が定時総会を開き、予算、決算、旧年度の事業報告、新年度の事業計画、人事などを審議、承認、決定しますが、最近は事業者団体が総じて沈滞気味なことが気になります。
例えば、そう高額とは思えない会費を捻出することができないので脱退したいとか、会員資格は欲しいので会費を割り引いて貰いたいといった会員の切実な声を耳にすることも少なくありません。
国内生産規模の縮小に歯止めがかからず、さりとて急成長する中国や新興国市場への参入も一部の有力企業を除くと成功事例は少ないのが実情です。幸い、東日本大震災によるファッション消費は、4月以降は前年を維持、若しくはクリアするようになりました。昨年11月から吹き出した「高感度・高品質・リーズナブルプライス」商品への微風は震災直後の一時を除いて継続しているように思えます。
しかし、この微風が本格的な追い風になり、その風に乗って新たな成長戦略を描くことのできる企業の数はそんなに多いとは言えないのではないでしょうか。「国内事業の先細り、海外市場への展開難」に起因する繊維ファッション業界を覆う閉塞感は、依然として拭われていない状況にあります。 事業者団体に加盟している会員企業は、厳しい経営状況からして、僅かな額でも支出は抑えたい。その状況は理解出来ない訳ではありませんが、一企業がこの業界を覆う閉塞感が拭えないからこそ団体の一員としてとどまり、一企業では出来ないことを一致協力して実施する必要があると思うのです。
「国内市場で需要を喚起する事業」「中国など海外市場で販売に乗り出す事業」これらは団体だからこそ出来ることであり、効果が期待できる事業です。行政の支援を得るためにも、団体の存在と役割は重要です。
前日本繊維産業連盟会長の前田勝之助東レ名誉会長の名言を思い出します。「森(産業)がなければ木(企業)は育たない」。今年の総会は、改めて「森」の重要性に着目し、木が成長するために必要な森を育てるためにどうすべきか、大いに議論したいものです。
(聖生清重)