FISPA便り「東京映画祭とファッション」

 東京を世界に誇れるファッション都市に、との構想に賛同する人は多いと思います。住んでいる人はもちろん、国内だけでなく海外から訪れる人にとっても、街並みが美しく、魅力的な商業施設やファッション産業が集積し、文化・教育施設も充実している街は、人が集まり、それが新たな文化を生み出す好循環が期待できます。経済効果も大きいでしょう。

 ファッション都市づくりで、かねて、関心があったことのひとつがファッションと映画の相乗効果です。映画文化を東京からアジア、世界に発信する。それによって、ファッションの発信地としてのイメージが高まることが期待できるでしょう。ひとつの映画で一大流行に結び付くファッションが生まれる時代ではないでしょうが、人々の様々な営みや喜怒哀楽の精神世界が凝縮された映画という文化は、人々の装い(ファッション)との相性が良いと思われます。

 ところが、去る8日付け日経新聞最終面に掲載された「東京国際映画祭2018」の記事を読んで、そうした楽観的な期待が急速にしぼんでしまいました。今回の東京国際映画祭では、ファッション、食、音楽,アニメ、eスポーツ、スポーツの6分野と連動したイベントが行われました。政府が後押ししたものです。「クールジャパン」戦略の一環でしょうが、そのことは評価できると思います。

 しかし、くだんの記事は、ファッションなどと連動した催事に関して「カンヌやベネチアでファッションが話題となり、文化イベントとして世界の注目が集まるのは、そこに映画祭の権威があり、人が集まるから。基礎となる映画祭の権威が下がれば元も子もない。東京は映画祭の原点を見つめるべきだ」と実に辛口の評価でした。

 東京国際映画祭でのランウェイショーは、ビームスの協力で雑誌の「GQ JAPAN」がプロデュースして行ったものです。その試みには拍手を送りたいと思います。映画祭に関連して東京らしい連動イベントを行うことは必要でしょう。そのためには、肝心の映画の出来こそが重要だということは、その通りですが、映画も関連イベントも魅力的で、大勢の人が集まるような催しになるよう関係者の奮起を期待したいと思います。

          (聖生清重)