FISPA便り「SCMに関する流行語」
気が付いたら、もう師走。2018年も終盤に入ってきました。今年の流行語は、カーリング女子の「そだねー」になりましたが、このコラムを読んでくださる諸兄姉にとっての流行語はどんなものだったでしょう。
繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)の活動に関する、今年の流行語をあげるとすれば、さて、何なのだろう、と考えました。もちろん、個人的なものですので、念のため。
思いついたのは「発注者のCSR(社会的責任)」でした。技能実習生の問題解決に向けて経産省とともに法令順守を求めたこと。取引ガイドラインに縫製業を加えたことでSC(サプライチェーン)全体を網羅するガイドラインができたこと。
FISPAの活動の今年の成果ですが、その根底で求められているものは「CSR」で、特に、SCの中での発注者の責任だと思います。縫製業などでの法令違反は、当該企業が一義的に負うべきは、その通りですが、同時にSC全体で取り組み、問題を根絶する必要があるでしょう。その際、発注者が違反企業とは取引しない、との断固とした姿勢を打ち出し、実行することが求められています。
企業活動や投資の世界でも「ESG(環境・社会・企業統治)」、SDGs(国連がまとめた持続可能な開発目標)が行動指針になっています。今年、バーバリーの在庫の焼却処分が世界的な批判を浴びましたが、これもそうした流れの一環です。毛皮の不使用を宣言するラグジュアリーブランドが相次いだことも同じ文脈の中でのことでしょう。
かつて、繊維流通は「暗黒大陸」と揶揄された時代がありました。歴史が長く、生産・流通が多段階でその間に問屋が介在する仕組みがそうさせたのですが、今では適正なルールに基づいて取引されるようになっていると思います。
しかし、技能実習生制度では、特に縫製業で法令違反が多いと指摘され、経産省から改革を迫られているのが実情です。本来、アパレル製品などファッション製品は、人々の心を豊かにするものです。でありながら、低賃金、長時間労働といった人権無視の労働が行われているとすれば、嘆かわしいばかりです。
問題の解決には、確かに、発注者の社会的責任が重要でしょう。SCの中で発注する側の企業がCSRを果たす。繊維ファッション企業でも縁が深い近江商人伝統の「売り手良し、買い手良し、世間良し」の三方良しは、今日でも十分通用する価値ある商人魂です。来年のSCMに関する流行語にふさわしいのではないでしょうか。
(聖生清重)