FISPA便り「社会的課題の解決に挑む」

 豊かな生活文化の創造を推進する日本ファッション協会(馬場彰理事長)が優れたクリエーションワークを表彰する「日本クリエイション大賞2018」の表彰式が先日、都内のホテルで行われました。受賞案件は、いずれも社会的な課題を解決するもので、授賞式では明確な理念を掲げて未来に挑戦する若者の姿勢が輝いて見えました。

 今回の応募案件は133件。環境、人口減、サイバー攻撃、働き方改革、農業改革など社会的課題の解決への取り組みが目立ちました。

 「大賞」のサイバーセキュリティクラウドで国内をけん引する「攻撃遮断くん」を手掛けている㈱サイバーセキュリティクラウド。欧米におされがちなこの市場で「世界中の人びとが安心・安全に使えるサイバー空間を創造する」との理念にもとづき、Webサイトへの攻撃を可視化し、遮断するサービスの開発・運用・保守・販売を行っています。2013年12月のサービス開始から2018年5月時点の累計導入実績は5000サイトを超えています。
「仕事改革開発賞」は、㈱シナモン。2016年10月に「日常的に発生する無駄な業務をなくし、人が創造性あふれる仕事に集中する世界を目指す」との理念で設立。開発した文書読み取りのAIエンジン「Flax Scanner」は、取引先ごとにレイアウトが異なる請求書、見積書、発注書、納品書、申込書、技術文書などの非定型帳票を自動で読み取り、ドキュメントから文字情報を正確に抜き出し、整理するAI-OCR(人工知能を活用した光学文字認識)製品です。

 「農業活性化賞」のイオンアグリ創造㈱は、イオングループの農業法人。設立10年目で全国20カ所の直営農場で計350hrを営農し、約70カ所のパートナー農場と合わせて、年間100品目の農産物を生産しています。2014年、採用枠40人に対し、4000人が応募したこと。以後、1500人規模の応募が続き、2018年には一けた台の採用枠に500人が応募したそうです。

 「教育文化賞」の岩本悠氏は、島根県隠岐諸島のひとつ中ノ島の海士町の人びとの島根県立隠岐高校を守りたいとの話を聞き、島に移住。島全体を学びの場とするプロジェクトを推進。いまでは全国、海外からも多くの高校生が入学し、現在、同校生徒約180人のうち、島留学の生徒が半数を占めるようになったとのことです。地域創生を実践し、成果をあげています。

 受賞者の素顔で驚くべきは、その若さ。サイバーセキュリティクラウド代表取締役の大野暉氏は1990年生まれの28歳。16歳で起業した経験を持っています。㈱ジナモンは、2016年に代表取締役CEOの平野未来氏が起業したベンチャー企業。平野氏は0歳と1歳の二児の母でもあります。イオンアグリ創造の平均年齢も29歳の若さです。大野、平野氏は、ともに世界市場を見据え、すでに進出しています。

 
                 (聖生清重)