FISPA便り「目下の関心」
繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)の会員企業は、原糸メーカーの川上から小売りの川下までの有力企業ばかりです。その有力企業の中堅幹部が集まった会合で、各企業が属している業界の現況や課題を披露しあう情報交換が行われました。先月中旬のことです。
業種は、合繊、織物、染色加工、副資材、総合商社、繊維専門商社、アパレル、小売りなどでした。2012年6月中旬という、それ自体には特別の意味はありませんが、果たして同時点での繊維ファッション業界の関心はどこにあったのでしょう。
見解を要約しますと①昨年は6月にプレセールを実施したが、今年セールを後ろ倒しにしたアパレルの店頭販売は厳しい ②人体に影響を及ぼす恐れがある芳香族アミンを生成する可能性のあるアゾ染料(12.4.25付当コラム参照 https://fispa.gr.jp/archives/401.html )への対応などで検査費が上昇している ③中国生産のコストアップは止められないがチャイナプラス1の、例えばミャンマーではストライキが頻発している ④(小売業は)低コスト→安売り→低収益を脱すため、自主企画やPB商品を国内生産を含めて強化している ⑤FISPAでの根絶宣言にもかかわらず、長い手形と歩引きがまだ残っている―などでした。
「2012年6月中旬の繊維ファッション業界の状況」は、「アパレル製品の店頭売り上げが低迷する一方、グローバル時代における最適生産地もコストアップが避けられない。加えて、アゾ染料や素材の検査費もかさんでいる。その中で旧態依然とした悪しき慣行が残っている」というものでした。
過去から現在、そして未来へと続く長い時間軸のほんの一瞬を切り取った繊維ファッション業界の姿。一企業の努力だけでは乗り切れない問題に直面しています。「1人のための全員、全員のための1人」はチームスポーツに共通する精神で、これは産業界にも共通すると思うのですが…。
(聖生清重)