FISPA便り「生きるために必要なもの」

 夏休みシーズンです。このメルマガの読者の夏休みは、いかがなものでしょうか。「節電の夏だから、あまり動かない」とグータラを決め込む方、自己研鑽に余念のない方もおられるかも知れませんが、お子さんや奥方にせっつかれて「海に、山に」の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 秋、冬、春に続く夏。夏の過ごし方では、何と言ってもアウトドアが似合います。入道雲と青い空。猛烈な勢いで生長する草木。短い命を謳歌する虫。生物である人間も活動が活発になるのでしょう。動きまわって玉の汗をかく快感は、夏にこそ味わいたいものです。

 そんな夏になると、決まって思い出すコラムがあります。劇作家の倉本聡さんが、北海道の富良野で役者養成塾の富良野塾を主催していた時のことを記したコラムです。塾生数十人に「生活必需品を10ずつ挙げよ」と問うた結果の第1位から3位は、「水、火、ナイフ」の順だったそうです。

 ところが、同じアンケートを都会の若者に対して行った結果は、どうだったでしょう。何と、「金、携帯、テレビ」の順でした。

 倉本さんは、そのエッセーで「原点に近い暮らしをしていると、自分の暮らしを支えている根源を常に見据えて立つ癖がつく。豊かといわれる都会の暮らしでは、根源が豊かさに埋没し、座標軸自体がゆらいでくる」と書いていますが、筆者は倉本さんの意見に同感です。

 今夏、大津市の中学2年生のいじめによる自殺事件が、世間をにぎわせています。この事件から「人間が生きる上で、真に必要なもの」を教えることが必要だという教訓を導くべきだと思うのですが、いかがなものでしょう。せめて、ひと夏のひと時でも子供たちに「生きる上で、真に必要なもの」を頭と体で考え、感じさせたいと思いませんか。             

 (聖生清重)