FISPA便り「AIスピーカータイプ」
平成31年度入社か令和元年入社か、そんな呼称はともかく、今年も多くの会社に新入社員が入社しました。世界が不安定化するご時世、会社の将来も激動が予想されます。折からのデジタル革命の波は、間違いなく産業構造を劇的に変え、会社の盛衰も一段とダイナミックなものになりそうです。
そんな時代での新入社員は、いったいどんなタイプなのでしょう。今年、最短距離で大学を卒業した新入社員が生まれたのは1996年。翌年には北海道拓殖銀行、山一証券が破綻し、日本経済に暗雲が漂っていたころです。1996年3月卒は、第一次就職氷河期世代で大卒求人倍率は1.08でした。
しかし、今年の新入社員の就職活動での求人倍率は1.88に回復しました。売り手市場です。加えて、経団連が就職指針の廃止を発表するなど、従来、日本経済社会の特徴だった終身雇用制の見直しが進む状況にあります。学生の側でも過労死事件を通じて長時間労働などの、いわゆるブラック企業を見極めようとの意識が高かったと思われます。
さて、今年の新入社員のタイプですが、人事労務分野の情報機関である㈱産労総合研究所が発表した「2019年度新入社員のタイプ」によると、今年は「呼びかけ次第のAIスピーカータイプ」だそうです。
「注目のAIスピーカー(引き続きの売り手市場)。多機能だが、機能を十分に発揮させるためには細かい設定(丁寧な育成)や別の補助装置(環境整備)が必要。最初の呼びかけが気恥ずかしいが(オーケーとか)、それなしに何も始まらない。多くの新入社員はAIにはできない仕事にチャレンジしたいと考えていることをお忘れなく」。
新聞やテレビ、雑誌から「AI」なる文字や言葉を見たり、聞いたりすることが当たり前になっている世相を反映したネーミングですが、「丁寧な育成」や「環境整備」は、せっかくの新人を有力な戦力にするためには、いつの時代でも求められるのではないでしょうか。たとすれば、今年は、特に「多機能」に注目したいと思います。
多機能の内容は、少なくともデジタルリテラシーがあり、英語ができて、コミュニケーション能力もある、といったところでしょうか。加えて、歴史や文化への造詣も深い。そんなイメージですが、自問してみれば「う~ん」ですが…。
この新入社員のタイプは、1973年に現代コミュニケーション・センター所長の坂川輝夫という方が世相を表す言葉でネーミングしたのが始まりだそうですが、最初のタイプは、何と「パンダ型」。「おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変」だったそうです。73年入社組の感想はいかに―。
(聖生清重)