FISPA便り「驚異のアウトサイダー芸術」

 薄暗い部屋一面に飾られた仮面の数々。表情はおどろおどろしく、恐怖を感じさせるものが少なくなく、部屋に入るとき、ちょっとした勇気が必要でした。「創作仮面館」。栃木県那須高原にあるという私設博物館の名前です。その館長の「ストレンジナイト」を自称する人物の作品に出合ったのは、今から4年前。東京・根津の小さなギャラリーでした。以来、奇妙な仮面が気になっていました。

 その「ストレンジナイト」さんが制作した創作仮面のほか、絵や廃材利用の立体物、過剰装飾の服や自転車などの「アウトサイダー・アート」を集めた展覧会が東京・水道橋の「ギャラリーアーモ」で開かれていると知って、見に行ってきました。72人の作者が2000点以上の作品を展示している同展は、名付けて「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」。

 奇妙な仮面、空想の生き物の絵、極彩色の服や自転車、廃材を利用した造形物などなど。展覧会のチラシには「アウトサイダー・アートとは、既存の美術や文化的継承の系譜とは無縁の文脈によって制作された我流の芸術作品」と書かれていますが、実際、作品を目の当たりにすると、そのユニークな表現には驚嘆させられます。

 一例をあげると、稲村米治さんの昆虫を使った作品。1970年に5000匹の昆虫で「新田義貞像」を制作。残った虫を供養するため1975年には5年の歳月をかけ、2万匹以上の昆虫で「昆虫千手観音像」を建立したそうです。作品が完成するまでの気が遠くなるような時間。どんな気持ちで昆虫を採集し、ホルマリンに漬け、作品に仕上げたのだろうと、想像を巡らせても全く想像することができませんでした。

 展示品を見た後、売店で購入した、櫛野展正さんの著作本「アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート」によると、櫛野さんは1976年生まれ。広島県在住。2000年から知的障害者福祉施設職員として働きながら、広島県福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」でキュレーターを担当。2016年からアウトサイダー・アート専門ギャラリー「クシノテラス」開設のため独立したことを知りました。

 アウトサイド・ジャパン展に出展した作者は、心の病を患った方が少なくないようです。アートの世界には「アール・ブリュット」という言葉があります。「知的障がい者が福祉施設の中で制作する作品」を意味するジャンルのことですが、そうした定義はともかく、人間という動物は、創作することが本能であり、生きることでもある、との強い思いを抱きました。

 同展は、5月19日(日)まで東京・水道橋の東京ドームシティ「ギャラリーアーモ」で開かれています。            
     

(聖生清重)