FISPA便り「輸入浸透率97.7%に上昇」

 日本繊維輸入組合がまとめた「2018年の衣類(布帛外衣+布帛下着+ニット外衣+ニット下着)の生産と輸出入の推移」によると、輸入浸透率は、前年の97.6%から0.1ポイント上昇し、97.7%になりました。高位安定といったところですが、改めて、アパレル製品の日本市場は、輸入品で占められている。言い換えれば国産品は希少な存在になっていることがわかります。

 輸入浸透率は、「輸入量÷(生産量+輸入量-輸出量)×100」の値ですが、この統計を見ると、いろいろなことが見えてきます。輸入浸透率が97.7%に達していることは驚きですが、一方で国内生産は2018年もさらに減少しています。実数は9568万2000点で、前年に比べ、2.8%減少しました。国内生産の1億枚割れは2017年のことです。2年連続して1億点を割り込んでいます。

   国内生産については、日本ファッション産業協議会(JFIC)が認定している純国産の「J∞QUALITY」による国内生産回帰の期待が伝えられていますが、現状は減少傾向に歯止めがかかっていません。

 輸入ですが、実数は38億3353万9000点です。このうち、中国のシェアは63.1%で前年に比べ4.0ポイント低下したものの依然として断トツのトップを維持しています。縫製のアセアンシフト、米中貿易摩擦の影響で、今後、中国のシェアは減少しそうですが、はたしてどうなるでしょう。

 こうした中で注目される動向があります。輸出は736万点と輸入量に比べるとほんのわずかですが、前年比では20.6%も増加しています。小規模だが品質とデザイン性に優れた「メード・イン・ジャパン」のアパレル製品が海外市場で受け入れられつつあるとすれば、先行きが楽しみです。

 この統計で毎年、思うことは日本市場への衣類の総供給量の多さです。布帛、ニットの下着を含んでいますが、2018年は39億2186万1000点で前年に比べ3.4%増加しています。国民1人が32点以上を購入しないと残りは在庫という計算になります。過剰供給が明らかだと思われます。地球規模の要請であるサステナブル(持続可能)の観点からも問題です。

 すべての供給者は、供給量と需要量を適正に判断して、不良在庫を残さない企業行動をとる必要があることをこの統計が教えてくれていると言えるでしょう。                           

(聖生清重)