FISPA便り「若さの秘訣は“忘年”」

 世に、表彰制度は数多くありますが、表彰式の楽しみのひとつに受賞者の謝辞があります。受賞者は長年、自分で信じた研鑽という道を一筋に歩んだ方が多く、話題になりにくい陰徳を積んだ方々もいます。そうした、受賞者の受賞の弁の多くは、「受賞は自分の努力だけではなく、家族や組織の仲間など周囲に支えられた結果です」と他者への感謝を言葉にします。

 味のある受賞者の弁。先日、日本メンズファッション協会(MFU)が行った「第10回グッドエイジャー賞」、「MFUマイスター〈技術遺産〉認証」の授賞式でも素晴らしい受賞の弁を聞くことができました。

 グッドエイジャー賞は「いきいきと輝く素敵なグッドエイジャーを表彰する国民運動。」今回は、ファッションデザイナーのコシノヒロコさん、フォトジャーナリストの笹本恒子さん、俳優でケーナ奏者の田中健さんが選ばれました。70歳半ばになっても世界で活躍するコシノさん。授賞式の翌日には、東京・銀座にプライベート画廊を併設するショップをオープンしました。コシノさんの受賞の弁は「ファッションデザイン、三味線、長唄、ゴルフ、書とやりたいことがいっぱいあって忙しい」。

 去る9月1日に98歳になったばかりのフォトジャーナリスト、笹本さん。100歳直前の年を全く感じさせない若さで登壇し、姿かたち、立ち居振る舞いには年頃の娘さんの風情が漂っていました。笹本さんは「年を忘れて、もう少しお仕事をしようと思っております」。

 61歳にして5歳の子供さんがいる田中さん。ケーナの演奏と新曲の歌声を披露してくれましたが、笹本さんの前では「60歳代はまだまだ、子供」のようでした。

 「マイスター認証」は「国内に工場を持ち、次世代に伝承すべき高度な技術・知識・見識を持っている隠れた名人を認定するもので、2回目の今回は個人の部7人・団体の部1社が選定されました。一般に職人技を持つ職人の方は寡黙ですが「曲線の塊である身体に心地よい服作りに努めています」(団体の部・アズール社長)など味のある一言ばかりでした。  

      (聖生清重)