FISPA便り「直筆手紙のすすめ」

 現代に生きる私たちにとって、パソコン、スマホは空気なようなもので、あって当たり前、なくては生きてゆけない。そんな存在なのではないでしょうか。ツイッターを駆使している米国のトランプ大統領ならずとも、今日では個人の生活シーンでも、ビジネス、政治の世界でもモバイルは必要不可欠な道具になっています。

 人々がコミュニケーションをとる際も、圧倒的多数がスマホ、パソコンを利用しているのではないでしょうか。昨今は、年賀状の発行枚数が減少続きだと言われています。これまでハガキの年賀状を出していた人がメールに切り替えているからです。

 そんなデジタル社会だからこそ、直筆の手紙が価値を高めている、と筆者は勝手に思っています。たとえば、ビジネスで会食やゴルフは日常的に行われているでしょう。IT企業だって同じではないでしょうか。取引先企業の担当者や同僚、同じ部署のメンバーとの懇親の場は大事な時間だと思います。

 コミュニケーションは、ノミニケーションとも言われます。お酒が好きな人も嫌いな人も、飲みながら一緒に食事をとる。昼間の会議や打ち合わせでは得られなかった意見交換が行われ、チームワークが強まる効果があるのではないかと愚考します。一方では、そんな時代ではないよ、との声が聞こえますが…。

 お礼に関して思うことがあります。手紙の効用です。食事をごちそうになった際、皆さんはどのようにお礼の気持ちを伝えていますか。相手にもよりけりですが、翌日、電話でお礼を申し上げる方が多いのではないでしょうか。友人や同僚ならメールでのお礼でしょうか。

 それでも問題はありません。しかし、直筆の手紙を差し上げたらどうでしょう。字や文の巧拙は問題ありません。気持ちを込めた直筆の手紙は電話やメールより、感謝の気持ちがより一層伝わると思います。メール全盛時代だからこそ、直筆の手紙のインパクトが強くなっていると思います。

 手紙と言えば、世界一短い手紙で有名なものがあります。フランスを代表する作家の「レ・ミゼラブル」の著者、ヴィクトル・ユーゴーが1862年に旅先から「レ・ミゼラブル」の売れ行きを心配して出版社に出した手紙とその返信です。ユーゴーの手紙は、便せんの真ん中に「?」の一文字。出版社からの返信は「!」の一文字。 

 作家が「売れ行きは?」と問うたのに対し、出版社は「よく売れている」というわけです。味のあるやりとりだと思います。

 こんな気がきいた手紙はなかなか思いつきませんが、暑中見舞いやお礼では直筆の手紙を送ったらどうでしょう。          

(聖生清重)