FISPA便り「FISPAは協力、連携の手本」

 総選挙の注目点のひとつに「決められない政治」からの脱却がありますが、何らかの決定を下さなければならないのに「総論賛成・各論反対」で決められないことは、日本の政治だけでなく、普通の会社や組織でも日常的にみられる状況でしょう。

 その点、繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)は違います。身内の話のようでいささか恐縮ですが、FISPAの活動の中核である「経営トップ合同会議」は、決めて、実行するための会議なのです。

 例えば、下請けいじめや優越的地位の濫用のような不公正・不公平な取引慣行は止めよう、との繊維業界積年の課題については、公正な取引のための取引ガイドラインが履行され、しかも、事務局が毎年、聴き取り調査し、その結果は経営トップ合同会議で公表するルールが粛々と守られています。代金の減額を誘因しかねない「歩引き」についても、昨年の経営トップ合同会議で全廃を決議し、その根絶に努めています。

 FISPA会長の馬場彰オンワードホールディングス名誉顧問は、去る11月16日に開かれた第13回「経営トップ合同会議」(64社の経営トップが出席)で「(悪しき取引慣行が横行していた)13年前を思うと隔世の感がある」と述べましたが、その要因は、「会議で取り決めた具体策を、各社が自らの責任で実行する」ことが会議運営の“憲法”になっているところにあります。

 今回の経営トップ合同会議では、「取引ガイドライン」の普及、啓発活動の継続、「情報共有化」では「総論賛成・各論検討」で各論を検討することで合意しました。

 同会議に出席し講評を求められた経済産業省の片岡進繊維課長は「中身の濃い議論、内容に驚いている。繊維課に来て3カ月。繊維業界は一枚岩ではない、と聞いていたが、そうではないことがわかった。業界内の協力、連携の好例だ」と述べました。「協力、連携」は、日本ファッションの世界への発信を軸とする繊維ファッション産業の競争力強化を推進する上でお手本になると思います。                              

(聖生清重)