FISPA便り「継続と再挑戦のFISPA」

  繊維産業流通構造改革推進協議会(FISPA、通称・繊維ファッションSCM推進協議会)の経営トップ合同会議がこのほど、東京・有明で開かれました。同会議は、適正取引の推進とSCM(サプライチェーン・マネジメント)構築を使命とする同協議会の最重要の会議です。20回目の今会議を傍聴して感じたことは、キーワードで言えば「継続」と「再挑戦」です。

  「継続」は、公正・公平で適正な取引が着実に進展していることから、それを評価するともに、さらに、時代の変化に合わせて、たゆみない取り組みを行う必要性を確認したことを意味します。例えば、「取引ガイドライン」を策定し、その実行にあたっては、経営トップ合同会議参加企業が責任をもって実行する、との約束事については、事務局による聴き取り調査でも確実に進展していることが明らかになっています。経営トップ合同会議が発足した20年前は、当たり前ではなかった基本契約書の締結が「当たり前」になったことが、その成果を端的に示しています。

 また、代金の減額を誘発する要因になりかねない不透明、不適格な取引形態である「歩引き」取引は、2010年に廃止で合意し、2017年にはFISPAと日本繊維産業連盟の連名で「歩引き取引の廃止宣言への協力」を両団体会員企業とその取引先4600社に送付するなどに努めた結果、全廃を実現した企業が増えていることが聴き取り調査でも明らかになっています。
 しかし、基本契約書の締結では、産地企業の多くが行っていないほか、歩引き取引についても常習的に歩引きを行っている企業も少なくないのが実情です。このため、今回の経営トップ合同会議では、今後とも取引ガイドラインを普及させるための説明会を開催する一方、歩引き廃止に向けてもさらなる活動を継続することになりました。

 FISPAのもう一つの使命である「SCMの構築」では、核心に触れる提案がありました。会議の意見表明で丸井グループの佐藤元彦副社長執行役員がこう述べました。「経営トップ合同会議は、適正取引の推進では、高い成果をあげた。その一方で、アパレル供給量は年間13億枚も過剰で、廃棄も少なくないとされている現実がある。過剰在庫問題こそが大きな課題だ。20回を迎えた経営トップ合同会議は次のステージに移る時だ。ITを駆使して『適時・敵品・適量』を目指して解決することが経営トップ合同会議の次のステージの課題だ」。

 佐藤副社長は、経営トップ合同会議の常連ですが、その指摘は正しいと思います。佐藤副社長も触れていましたが、FISPAは、川上から川中、川下までのリーディング企業が一堂に集まっているのが特徴の一つです。川上から川下までのSC(サプライチェーン)を革新することは、20回以降の経営トップ合同会議の使命でしょう。

 今回の経営トップ合同会議では、情報化分科会活動で「情報化勉強会」を立ち上げ、IoT、ビッグデータ、AIなどの知識と理解を深めるとともに「コネクテッド・インダストリーズ」の推進に努めることになりました。佐藤副社長が指摘した第二ステージでの挑みがいのある「再挑戦」ではないでしょうか。

(聖生清重)