FISPA便り「『紙で読書』で能力アップ」

  年末の忙しい時期の話題としてはふさわしくないかも知れませんが、長い年末年始を前にした話題だとしたらふさわしいかも、というわけではありませんが、去る24日の読売新聞1面で読んだ、読書に関する調査結果の記事には納得がゆきました。わが意を得たり、の記事です。

 記事の内容はこうです。国立青少年教育振興機構が今年2月、20~60歳代の計5000人を対象に読書に関する調査を行ったところ「スマホなどの電子書籍よりも紙の本を読む人の方が、何事にも進んで取り組む意欲や、物事を多面的にとらえる能力が高い」との結果になった。

 今回初めて、利用する主な媒体や読書時間ごとに①紙②スマホやタブレット③パソコン④複数の電子機器⑤ほとんど読まない、の5グループに分類。さらに▽物事に進んで取り組む意欲(主体的行動力)▽多面的、論理的に考える力(批判的思考力)▽自分を理解し肯定する力(自己理解力)を測る質問を出して自己評価してもらい、各グループの平均点(最高20点)を比べたものです。

 その結果、「紙」は主体的行動力が13.11点、批判的思考力が13.48点、自己理解力が14.02点と電子媒体より0.22~1.04点高かったそうです。読書をしないグループの点は、いずれの力も最も低い結果となっています。

 電車の中の光景を思い出してください。少なくとも半数以上の人はスマホ画面を見ているでしょう。何を見ているのかは知りません。筆者が近くの乗客を観察した限りではゲームに興じている青少年が多いように思われます。若い女性はファッション商品を品定めしているのでしょうか。小説を読んでいる中年のサラリーマンも少なくありません。ゲームと思われる画面を操作しているオバサンも見受けられますよね。

 そんな車中で高校生か大学生と思しき青年が文庫本を静かに読んでいる姿は美しく、「好青年だなあ」と思い、にんまりしてしまいます。ガラケーを愛用していて、歩きスマホを迷惑だと感じている筆者にとって、くだんの調査結果は、文庫本を読む青少年へのエールのように感じました。

 ここまで書いて、こんな名言があることを思い出しました。トム・ソーヤーの冒険の著者であるマーク・トウェインがこんなことを言っています。「良書を読まないものは、良書を読む能力のない者と少しも変わるところがない」。ネットで調べたら、こんな名言もありました。「私の本は水だ。偉大な天才の本はぶどう酒だ。しかし、みんなは水を飲む」。            

 (聖生清重)