FISPA便り「クリエーション賛歌」(下)

 日本ファッション協会が主催する「日本クリエイション大賞」。筆者は1987年の第一回から、ほとんどの授賞式に参加しています。普段は埋もれている感動的なクリエーションワークを知り、満たされたひと時を持つことができるからです。が、それ以上に受賞者の謝辞を直接、聞きたいからです。

 今年の受賞者の謝辞もこころに沁みるものばかりでした。大賞のカルチュア・コンビニエンス・クラブ社長兼CEOの増田宗昭さんは「創業前は、ファッションで先頭を走っていた鈴屋で10年お世話になった。1983年に円満退社し、その時の退職金100万円で創業。すべての産業はファッション化する。そうすると、自分のライフスタイルを選ぶ場が必要になる。それは、映画、音楽、本の中にある、と考えて32坪の本屋をスタートした」。

 100年前の創建時の姿に甦った東京駅舎。毎日、百数十万人が利用しながら前代未聞の耐震改修工事を成し遂げました。梅原康義東京駅長は「建築をはじめとする日本の技術の総合力で東京駅を復元しました。東京駅は、日本の顔。ニッポンを元気にしたい」。片足麻痺でもこげる“魔法の車いす”を製品化した㈱TESSの鈴木堅之代表取締役は「障害を負うと人が去ってゆく。しかし、足こぎ車いすがあれば、もう一度、社会に出てゆける」。

 上層階ほど幅が長い建物がユニークな熊本北警察署など、次代を拓く77施設の建築文化を世界に発信し続ける一方、観光資源とも認識されている「くまもとアートポリス」のコミッショナーで建築家の伊藤豊雄さんは「学びつつ創る、創りつつ育む、をテーマに展開した成果である熊本産木材を使用した“みんなの家”は、被災地で喜ばれている」。

 東日本大震災による津波の到達ラインを桜並木でつなぐプロジェクト「桜ライン311」代表の橋詰琢見さんは、50人以上の友人、知人を失った。桜の植樹に思いを込めて「次にくる大津波では、人的被害をゼロにしたい」。

                                        (聖生清重)