FISPA便り「健闘するTX輸出で心配なこと」

 年初来、超円高が修正されていますが、昨年までは超円高で日本製造業の輸出環境は厳しい状況に置かれていました。にもかかわらず、日本の繊維品輸出は大健闘しています。

 2011年の繊維品輸出は、史上最高の98億ドルで100億ドルを射程に入れました。2012年は100億ドル台突破が期待されていました。実際は、96億ドルで前年比3.0%の減少でした。しかし、超円高を勘案すれば、前年比3%減という実績は大健闘だと言えるでしょう。

 商社などによると、繊維品輸出の健闘は、新商品開発と新販路開拓につきるようです。年末にかけて失速しましたが、高密度織物は新商品開発の好例です。織物は、繊維品輸出の約30%占める日本の主力商品です。昨年は4.0%減で全体の足を引っ張った格好ですが、4番バッターの役割は果たしたと言えるでしょう。ちなみに、アパレル輸出は4.2億ドルで輸出全体に占めるシェアはわずか4.4%です。

販路別で見ると、国別輸出先第1位で38.0%を占める中国が7.0%減少しましたが、ベトナム向けは9.0%、タイ向けは6.0%、それぞれ増加するなどASEAN向けは軒並み増加しました。分母は小さいもののサウジアラビア向けが9.0%増加するなどで西アジア向けは14.0%も増加しました。

 市場ニーズに合った新商品を開発し、新しい販路を開拓した努力の姿が、統計数字から読み取れます。加えて、輸出に際しての正確なデリバリーや用途提案など、日本ならではのきめ細かいサービスが功を奏していると見られます。

 さて、注目は今後です。アベノミクスによる円安で輸出環境は好転しました。今年こそ100億ドル突破が期待されるところですが、気がかりなことがあります。テキスタイル産地の規模縮小に歯止めがかからず、その結果、「(円安だからと言って)売るものがない」とのぼやきが聞こえることです。そうは言っても、日本の繊維業界には、100億ドル分輸出できる力が残っています。踏ん張りを大いに期待したいと思います。            

(聖生清重)